レオパレス21を追い詰めた「ガイアの夜明け」の告発(後)
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第2弾は、違法建築の告発
「ガイアの夜明け」の告発第2弾は、2018年5月29日に放送された。第1弾はレオパレス21とオーナーとの「契約」をめぐるトラブルだったが、第2弾は「物件」そのものの不正に切り込んだ。
レオパレス21の一部のアパートの天井裏には、遮音や延焼を防ぐ「界壁」が設置されていなかった、と告発した。界壁がないと部屋と部屋との遮音性が著しく失われるだけでなく、ひとたび火事が発生すれば、瞬く間に火が燃え広がってしまう。「日刊サイゾー」(2018年5月31日付)は、ネットニュース編集者の話として、ネットでこんな都市伝説が語られていると伝えた。
〈レオパレスの音漏れネタは、ネットで有名でした。『チャイムを鳴らされたと思って玄関を開けたら、4軒隣の部屋だった』『ティッシュを取る音が聞えてくるのは当たり前。携帯のポチポチが聞こえることも』『右の隣の部屋の住人が屁をこいたら、左の部屋の住人が壁ドンしてきた』といった“レオパレス伝説”はありましたが、実際に音が漏れるような構造になっていたということですね〉
5月29日の放送は、詐欺まがいの経営手法のみならず、アパート自体にも問題があることを白日のもとに晒した。
「ガイアの夜明け」で自社のことを報じられることを知ったレオパレス21は、29日の番組放送直前に記者会見を行った。「建築基準法の違反の疑いのある物件がありました」と発表したが、意図的な手抜き工事ではないと主張した。
シェアハウス「かぼちゃの馬車」の元社長はレオパレス21の出身
番組は、レオパレス21と女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」の詐欺スキームも追及し、老後の備えがローン地獄に突き落とされた中年サラリーマン大家を取り上げていた。
Aさん(50代、仮名)は3年前に、銀行から1億円の借り入れをした。不動産会社スマートデイズ (東京・中央)が都内を中心に1000棟を展開する女性専用シェアハウス、「かぼちゃの馬車」の1棟を購入。Aさんが億単位の借金をした決め手は「30年間定額家賃保証」という謳い文句だった。しかし、17年10月、スマートデイズから賃料減額の通知が一方的に送られ 18年1月には家賃支払いが停止。スマートデイズは18年5月に破産宣告を受けた。「30年間の定額家賃保証」があっけなく崩壊し、Aさんには空き室だらけのシェアハウスと巨額のローン返済だけが残された。
この間、スルガ銀行(静岡県沼津市)による「かぼちゃの馬車」向けの不正融資も発覚した。スルガ銀行は、銀行界では絶滅危惧種といえる岡野一族の同族経営。創業家出身の岡野光喜会長兼CEOが引責辞任に追い込まれ、同族経営に終止符を打っている。番組が、レオパレス21と「かぼちゃの馬車」を同列で取り上げたのにはわけがある。スマートデイズの社名変更前のスマートライフ社長、大地則幸氏は、レオパレス21の出身者だからだ。大地氏はレオパレス21から、同社を去った深山祐助氏がつくったMDIに移った。MDI時代にスマート社に営業に行った際に、裏の創業者に引き抜かれたという。
大地氏はレオパレス21を摸倣して、サブリースで借り上げるスキームを取り入れた。「30年間定額家賃保証」のセールストークでオーナーを安心させ、瞬く間にシェアハウス「かぼちゃの馬車」を1,000棟販売した。2016年には『「家賃0円、空室有」でも儲かる不動産投資』(ダイヤモンド社)を出版。「かぼちゃの馬車」の拡販に活用していた。
だが、「家賃0円、空室有」のビジネスモデルが成り立つわけがなく、あっけなく崩壊した。レオパレス21と「かぼちゃの馬車」の大きな違いは、買い主が土地持ちの地主か、サラリーマンか、だ。「かぼちゃの馬車」はミニ版のレオパレス21だった。
第3弾は、全棟調査や補修工事は進んでいないと告発
「ガイアの夜明け」の追及は止まらない。第3弾は19年2月5日。前回の放送を受けて約束された全棟調査や補修工事が進んでいないと告発した。
レオパレス21を相手取って集団訴訟を起こしている「LPオーナー会」代表の前田和彦氏は、同社から送られてきた調査・補修工事の進捗状況を示して、「調査が終わったものは1棟もない」(1月23日時点)と明かす。ところが、同社サイトが示す調査進捗率は、なんと「98.4%」と公表されていた。前田氏は「発表された進捗状況とまったく違う」と憤る。「ガイアの夜明け」の第3弾の告発を受け、レオパレス21は緊急会見に追い込まれた。2月7日、レオパレス21の深山英生社長は記者会見で、外壁や天井の耐火性能、遮音性などで国が定める仕様を満たさない法令違反の物件が、新たに33都府県で1,324棟見つかったと発表した。
補修のため、最大で住民計1万4,443人に引っ越しを求めるが、うち641棟は天井の耐火性を満たさずに特に危険なため、住民計7,782人にはすぐに引っ越しを要請するという。住民からは「急に引っ越しできない」と怒りの声が上がる。最終損益は439億円の赤字
レオパレス21は2月8日に、2018年4~12月期連結決算を発表した。最終損益が439億円の赤字(前年同期は128億円の黒字)だった。最終赤字は7年ぶり。施工したアパートで施工不良が発覚し、補修工事の費用や今後の引っ越し代の負担を見込んだ引当金など434億円を特別損失として計上。アパートの売却損なども発生して特別損失は510億円にのぼった。売上高は前年同期比2%減の3,763億円、営業利益は65%減の65億円だった。19年3月期通期では380億~400億円の最終赤字を見込む。最終赤字は8年ぶり。予想数値に幅があるのは期中に入居募集を再開できる戸数が不明なためだ。
日本経済新聞(2月17日付朝刊)は、〈施工不良の問題が響き、レオパレス21から法人顧客が離れ始めている。社宅などとして利用している企業が、社員の安全が危ぶまれるうえ、人材採用にも支障が出かねないと懸念しているためだ〉と報じた。
レオパレス21は、地主から賃貸アパートの建築を受注し、完成後に一括で借り上げて入居者に転貸するサブリース業者。賃貸管理戸数は57万戸で、物件のオーナーに支払わなければならない賃料は月250億円にのぼる。入居率が低下すると「逆ざや」に転落する。
実現できるかどうかわからない長期の賃貸保証によって顧客を獲得するビジネスモデルそのものに無理があった。自ら蒔いた種だ。自業自得というしかない。レオパレス21を追い込んだ「ガイアの夜明け」は、成功企業だけを取り上げることから「提灯(ちょうちん)番組」と揶揄されていた。レオパレス21の告発で、「週刊文春」の“文春砲”になぞらえて、「ガイア砲」の異名がついたという。
(了)
【森村和男】
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