2024年12月22日( 日 )

賃貸アパート首位、大東建託に吹きつける逆風 「サブリース商法」が槍玉に(前)

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アパート賃貸業界の「サブリース」商法に強烈な逆風が吹きつける。レオパレス21の次は、業界最大手の大東建託の契約トラブルが表面化した。大東建託は賃貸住宅を地主に提案し、一括買い上げ(サブリース)、賃貸仲介から管理、家賃保証までを一貫して手掛ける事業モデルが特徴だ。

消費者機構、大東建託の情報提供を求める

 共同通信(2月27日付)が配信した記事を各紙が掲載した。

 〈賃貸住宅建設大手の大東建託(東京)が募集するアパートの契約をめぐり、解約時に申込金の返金を受けられないなどのトラブルが起きているとして、特定適格消費者団体「消費者機構日本」は27日、実態を把握するため、同様のトラブルを抱える人に情報提供を呼び掛けた。

 一方、大東建託の担当者は取材に「過去の約款では返金はできないとしていたが、指摘を受けて変更し、現在は返金対応を行った」と話している。

 大東建託は、土地の所有者らにアパート建設を提案。建設工事の契約を結ぶ前の段階で「地質調査費」として30万円の申込金を請求した。契約した際は一時金として平均約200万円を請求していた。しかし、2016~18年の約款では、契約に至らなかったり、解約したりしても返金できないと記載していた。

 消費者機構日本の指摘を受け、18年に約款を変更したとしている。〉

消費者機構日本は提訴の権限をもつ

 この記事のポイントは、消費者機構日本(COJ、 東京都千代田区)が大東建託の「サブリース商法」を問題ありとみなした点にある。説明が必要だろう。

 消費者機構日本は2004年に設立された消費者被害の未然防止・拡大防止・集団的被害回復を進める団体。悪徳商法の被害者に代わって不利な勧誘行為などの差し止めを請求できたが、損害賠償は請求できなかった。
 被害者個人で請求する場合は訴訟費用などの負担が重く、泣き寝入りしがちだった。そこで、悪徳商法の被害者らに代わり、消費者団体が金銭面の被害回復を求めて訴訟を起こせる新制度を16年10月に施行。消費者庁は16年12月、消費者機構日本を提訴の権限がある「特定適格消費者団体」に認定した。この制度での認定は初。

 特定適格消費者団体が多数の被害を確認した場合、業者を相手に、賠償金を支払う義務があることを求めて提訴。裁判所が支払い義務を認めれば、団体は訴訟に参加する被害者を募り、裁判所が被害者ごとの支払額を確定する。

 上記の消費者機構日本が大東建託との契約トラブルを抱える人に情報提供を求めたという記事は、大東建託を相手取り、訴訟を起こす準備段階にあることを示している。大東建託は「サブリース商法」の根幹にかかわる問題を孕んでいるのだ。

『週刊ダイヤモンド』が大東建託を告発

 レオパレス21の商法を告発したのは、テレビ東京の経済情報番組「ガイアの夜明け」だったが、大東建託は『週刊ダイヤモンド』が告発した。2017年6月24日号で「相続・副業の欲望に付け込む 不動産投資の甘い罠」を特集。「サブリース商法」に切り込んだ。

 2015年1月、相続税が増税になった。これまでの基礎控除から4割減となったことで、相続税の課税対象者が倍増。アパート建設など、相続税の節税効果が最も高い収益性を活用した節税策がブームと化した。同誌は、こうした収益不動産への投資は、事業者が提案するように本当に利益が出るのかを検証している。

 ポイントは2つ。1つ目は、提案で多く見られる35年にわたって満室が続き、家賃が下がらないというもの。新築から数年間は提案通りの果実が得られるが、年月を経るごとに劣化が進み、近隣に新しい物件ができるなどして予定が狂う。

 2つ目は、35年間の一括借り上げ(サブリース)があるので安心というもの。確かに、借り上げはしてくれるが、当初の家賃を35年間にわたって保証してくれるわけではない。

 同誌は、アパート建設やワンルームマンションなどの投資物件のシミュレーションを行った。結論は、非常に厳しいものになった。
本来、不動産投資はミドルリスク・ミドルリターン。35年の一括借り上げ、家賃保証の「サブリース商法」は、やがて破裂する時限爆弾のようなものだと警鐘を鳴らした。

飛び込み訪問一本槍の営業

 『週刊ダイヤモンド』オンライン(17年7月10日付)は第2弾として「大東建託現役社員が『経営陣の総入れ替えを』と悲痛な叫び」を報じた。
 大東建託は地元不動産会社などを通じて地主の情報を調べ上げ、全国の支店の建築営業課に属する営業マンが飛び込みで地主を訪問、相続税対策や遊休地の活用などで木造アパート建築を提案するというビジネスモデルで成長を遂げてきた。

 先祖代々の土地をもつ地主は、相続時に土地を手放したくないのに加え、高い相続税も払いたくないと考えがちだ。そこで大東が提案するアパートを建築すれば節税となる上、「35年一括借り上げ」のサブリースによって家賃収入が保証される。そのため、とくに人口が少なく、入居者募集に苦戦する地方や都市郊外の地主にもてはやされてきた。

 〈ところがリーマン・ショック以降、そんな顧客層に異変が生じている。新規顧客とリピーター顧客の比率が逆転し、今では65%以上がリピーター頼りになっているのだ。大東が主戦場とする人口減少の激しい地方でアパート建築の新規需要が落ち込んでいることが大きな理由だ。そのため、かつて同社が建てた、老朽化したアパートの建替えの需要に依存している様子が鮮明に浮かび上がっている。〉(週刊ダイヤモンドオンライン)

 受注を回復させるため、大東建託は営業方針を打ち出した。「午前は新規開拓訪問の時間を徹底確保させ、午後は見込み候補顧客見極め訪問実施、追客の徹底をさせる」というものだ。この営業方針に、社員のこんな声を載せている。

 〈新規営業がとれないのは営業スタンスが時代遅れだから。昔ながらの飛び込み訪問の一本槍が、当社のイメージダウンにつながっているのは疑いようがありません。同じ地主のところに朝・昼・晩と3人の違う営業マンが3回も行くのだから、嫌われるのは当たり前ですよね。〉(同)

 大東建託といえば、営業力によって賃貸住宅部門でシェア1位を達成した会社だ。

 〈月に1棟売れば月収は約200万円となる。それで年収数千万円を稼ぐスーパー営業マンもいるが、それはほんの一握り。1棟も売れず、わずか3カ月で辞めてしまう営業マンも後を絶たないという〉(同)

 営業マンの営業力が落ち込み、ビジネスモデルの屋台骨が揺らいでいるのだ。

(つづく)
【森村 和男】

(後)

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