2024年11月25日( 月 )

ICOの被害続出(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 このようにICOプロジェクトの問題が露呈しているなかで、依然として暗号通貨の新規発行は続いている。現在発行された暗号通貨は約2,000個で、毎月新しいコインが200個ずつ新規発行されているという。暗号通貨の販売および流通にはネットワーク販売会社が深く関わり、投資をあおっているようだ。しかし、販売をする人も、コインを購入する人も、暗号通貨のことをよく理解しておらず、政府ではこれを取り締まるような管轄部署も、人材もほとんどいないのが現状だ。最近ネットワーク販売会社は不動産の販売などよりも暗号通貨の販売、流通に力をいれていて、今後被害は拡大しそうだ。

 ICOとはInicial Coin Offeringの略字で、資金を集める会社はコインを発行して投資家にコインを渡し、その代わりに資金をもらうことをいう。事業の内容は白書に書いてあって、投資家はその白書で事業内容を判断する。しかし、専門家ではない限り、白書を見ただけで、事業を判断するのはとても難しい。ひどい場合には白書を自社で書かず外注に出す場合もあるという。
IPOの場合には事業性を証明するいろいろな証拠書類の提出を求められるが、ICOの場合には白書以外にそのような書類もない。またIPOの場合には証券を発行して投資家に渡すことになるが、ICOにはそのような義務も課されていない。資金を集める立場からすると、ICOは資金集めが容易になっているが、投資家からすればとてもリスクが高くなった。

 このようなICOに数百憶ウォンという莫大なお金が簡単に動いたりしているのは、驚きといえば驚きである。さらに、ICO推進企業は上場会社と違って、外部監査および報告義務もないので経営の透明性を確保する方法がなく、経営陣が投資金を横領するなどのトラブルも続出している。1つだけ、具体的な事例を挙げてみよう。韓国ではいわゆる「現代コイン」と呼ばれているHDACの場合、2,800億ウォンの資金を集めることに成功した。しかし、1年もたたないうちに、コイン価格の暴落、運営費などで資金は300億ウォンくらいしか手元になく、事業の継続が難しくなっているという噂が立っている。このような事例は1つや2つではない。数百億ウォンのICOには成功したが、その後事業自体が壁にぶつかっているケースも多い。

 それでは、各国ではどのような対応をしているだろうか。

 米国の場合、今までのICOは米国証券取引委員会(SEC)の調査を受けていなかったが、現在米国当局は規制をかけ始めている。日本でも、取引所は登録制で、暗号通貨に対する規制を徐々につくりつつある。しかし、韓国ではICOを禁止しただけで、その後規制などの具体的な動きが何もないので、業界関係者は危惧している。

 ブロックチェーンと暗号通貨は不可分の関係で、暗号通貨を規制しながらブロックチェーンを育成するのは矛盾があるという指摘もある。いろいろな被害が発生するなかで、被害を申告しても法律の未整備、技術的な特殊性などで、なかなか明確な判断を下せない状況が続いているようだ。

(了)

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