『脊振の自然に魅せられて』ショウジョウバカマと感動の出会い
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花の撮影に行こうと思っていた前日、ワンゲルの先輩 T氏から「ショウジョウバカマが満開だよ」という脊振の花便りの一報が入る。この先輩は春の花の状況確認を兼ねて毎年3月に脊振山系の最西の十坊山(635m)から脊振山系の中間地点の金山(967m)まで、単独で10時間歩く健脚の持ち主だ。
ショウジョウバカマの群生地は脊振山系に数カ所ある。この群生地は一般の登山者が寄り付けない場所で見つけたものだ。
カメラのカメラとバッテリーをチェックし、翌日早朝に目的地へ向かった。
他の花の撮影も兼ね、重いジッツオの三脚をかつぎ渓谷沿いの登山道を歩く。重い180ミリのマクロレンズを三脚に固定しようとしたその時、長年愛用している三脚からカメラを固定する止めネジが外れた。ネジを戻して再び花の撮影をする。撮影を終え三脚ケースに入れようとした時、再びネジが外れた。原因は三脚の雲台(カメラを載せる部分)の穴が磨り減り、下からカメラを止めるネジがずれ落ちたのである。
ネジを無くさないためにズボンのポケットに入れようかとも考えたが、三脚のケースに入れるから大丈夫だろうと思った。しかし、これが間違いだった。次の花の撮影場所でケースから三脚を取り出したらネジが付いていない。ケースの入り口を下にして肩に担いできたので、ケースから転げ落ちたのだ。ネジがないと三脚が役に立たない。歩いてきた山道を100mほど戻りながら目を皿にして探したが見つからなかった。
役に立たなくなった重い三脚を肩に担いで目的のショウジョウバカマを求め谷のガレ場を登って行く。谷の途中にヤブツバキが1本現れた。雨上がりの露をつけ輝く花が見事だった。ザックからカメラを出し写真になる花を選んで数枚撮影した。
さらに石ころだらけで足場の悪いガレ場を登って行く。ガレ場には私と逆方向の縦走路から、このガレ場に下ってきた先輩の真新しい足跡がついていた。
縦走路に近づくと雨上がり独特の光景が展開していた。霧のベールに包まれた山の光景だ。幻想的な光景に感動を覚える。山は天気だと歩くのに快適であるが、写真家にとっては霧に包まれた光景が絶好のシャターチャンスであり、写真になる。
霧のシルエットの中にショウジョウバカマが現れた。私の体から熱い血が湧き上がってくる。感動を覚えながら霧に浮かぶショウジョウバカマの撮影を開始する。
ふと山の方へ目線をあげると霧の中に群生しているのが見えた。少しピンクに染まった花が斜面一面に咲いている、見事である。
今日は花を傷めないように長靴を履いてきた。長靴で花を踏まないよう群生地に近づき三脚が使えないので手持ちで夢中にシャッターを切った。
撮影が一段落したので、シートを広げて腰を下ろし、持参したコーヒーをゆっくりと飲む。ショウジョウバカマの群生に囲まれた静かな場所で味わう贅沢な時間である。下界では絶対に味わえない一時を過ごした。
谷から吹き上げてくる風で体がひんやりする。体が冷えないうちに防寒対策の手袋をしてザックと三脚を担いで谷を登り縦走路へ向かう。手が暖かい、100円ショップで買った手袋が役に立つ。ミヤコザサが出てきた、縦走路が近いと分かる。5分ほどで縦走路へ出た。現在地を確認し、縦走路の分岐から登って来た登山口方向へ下る。
20分ほど歩くと最初に撮影した場所近くに戻って来た。再び三脚の止めネジを探しながら登山口方向へ下る。しかし止めネジは見つからなかった。
天気の悪い早朝には登山者と遭遇しなかったが、撮影が終わった昼前には天気が回復し登山者も登って来ていた。所要時間4時間、この日はトラブルもあったが最高の山旅となった。
撮影には苦労もあり落とし物、忘れ物も時にはある。三脚の止めネジは部品として購入できるので、帰宅後、ネットで注文した。
※ショウジョウバカマ:正式名はツクシショウジョウバカマ(ユリ科)です。杉林や樹木の木漏れ日の中で咲いています。
山いりて 深き谷間に 花ありし ショウジョウバカマ 霧に包まれ
2019年4月1日
脊振の自然を愛する会
代表 池田 友行関連キーワード
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