商号復活の「日本製鉄」~昔の夢を取り返せるか(前)
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かつて鉄鋼は「産業の米」と呼ばれ、ビルや橋梁などの建築物から自動車、電気製品など幅広い分野で使われる基礎素材であり、その国の工業製品やインフラの質を左右する基幹産業でもあった。しかし日本においては、内需の縮小、新興国需要の増大にともなう質の変化、中韓メーカーとの競争激化により、業界再編がいつ起きてもおかしくない状況となっている。
日本の粗鋼生産量は、1973年に最初のピークを迎えた後、高度成長期の終焉とともに約30年近く停滞していた。鉄鋼業界は斜陽産業の代名詞となり、高炉閉鎖、人員削減など、大規模なリストラを余儀なくされた暗い過去の歴史がある。
2000年代に入り、低迷を続けていた日本の粗鋼生産量は、やっと右肩上がりの伸びを見せるようになった。中国やインドをはじめとする新興国の需要が爆発的な伸びを見せ、日本の大手鉄鋼メーカーが得意とする自動車鋼板等高級鋼への需要が高まったためである。
・日本の鉄鋼産業は、世界最高水準の技術力、不況期に断行したリストラによる生産性向上を背景に、2002年を境に劇的な復活を遂げた。
しかし2008年9月15日、米国第4位の投資銀行だったリーマン・ブラザーズが経営破綻。世界の金融危機が発生した影響を受けて、世界の鉄鋼需要は、08年、09 年と2年連続で落ち込むなど厳しい状況が続いた。
その状況を打破するため、日本においては新日本製鐵と住友金属工業が2011年2月、合併基本計画を発表。公正取引委員会の1次、2次審査を経て、2012年10月1日に新日鐵住金が発足した。
【表1】を見ていただきたい。日本の鉄鋼メーカーの10年間の売上高推移表である。新日鐵と住友金属工業が合併する前の期は補正して新日鐵住金の計数としている。
~この表から見えるもの~
10年3月期における新日鐵住金の売上高は4兆7,698億円で、シェアは43.9%。JFEHDは3兆9,082億円で、シェアは36.0%。神戸製鋼所は2兆1,772億円で、シェアは20.1%となっている。
15年3月期は景気回復の流れを受けて、高炉メーカーの売上高は過去最高を記録している。
・新日鐵住金の売上高シェアは10年3月期と比較すると+5.6%増の49.5%。
・JFEHDの売上高シェアは▲2.1%の33.9%で、神戸製鋼所のシェアも▲3.5%の16.6%の減少となっており、新日鐵は住友金属を吸収合併することによって過半数に迫るシェアを確保し、独走態勢を築いていったのがわかる。
18年3月期を見ると、新日鐵住金の売上高シェアは50.5%。JFEHDのシェアは32.8%。神戸製鋼所のシェアは16.8%。10年3月期と比較すると、新日鐵住金のシェアは+6.6%で、JFEHDは▲3.2%、神戸製鋼所は▲3.4%となっており、新日鐵住金は過半数を超えるシェアを確保している。
新日鐵住金の18年3月期の売上高は5兆6,686億円で、15年3月期の5兆6,100億円を超えているが、FEHDと神戸製鋼所は超えていない。19年3月期に超える予想となっているが、この2社にとっては厳しい経営状況は今も続いているようだ。
(つづく)
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