2024年12月23日( 月 )

ブロックチェーンが抱えている現実の課題(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 ブロックチェーンが向いているのは、中央機関が存在しない方が望ましいとか、仕様変更がしない方がよいシステムだろう。ブロックチェーンは産業分野より、むしろお金に関わる分野に向いている。お金は仕様変更があっては困る分野なので、ブロックチェーンはビットコインと相性が良いわけだ。

 それでは、ブロックチェーンが抱えている課題にはどんなものがあるだろうか。ブロックチェーンの技術は未熟で、改善には時間と費用が必要であることだ。近年いろいろなブロックチェーンプロジェクトが推進されているが、ソフトウェアのバグなどが発見され、大きなアクシデントを起こす可能性が十分ある。

 ブロックチェーンに採用された新しい暗号アルゴリズムが世の中に受け入れられるためには、通常数年の歳月が必要だと専門家は指摘する。ブロックチェーンは書き換えができない分、データの整合性を確保がするのが難しく、万が一、ソフトウェアにバグがあれば、直ちにデータの整合性が失われ、そのブロックチェーンは使えなくなる。二番目に、既存のデータベースに比べ、コストが高く、導入に時間がかかるという点だ。

 ブロックチェーンはチェーンのかたちになっているため、ブロックのつながりが直列になる。既存のデータベースは並列につながっているのにブロックチェーンは直列なので、アップデートなどにも不利なのだ。このようにコストも高く、速度も遅いシステムが企業で歓迎されるだろうか。ブロックチェーンでは、頻繁なチェック、頻繁な複製などが行われるため、データの通信量も膨大になる。ブロックチェーンは使い続ければ、そこに記録されたデータ量も増えてくるので、どうしても処理スピードが遅くなってしまう。実際eBayは1秒に約1万のデータを処理しているのに、ビットコインは1秒に3回の取引しか処理できず、処理スピードが問題になっている。

 三番目に、メンテナンスコストの違いである。ブロックチェーンのメンテナンスコストは従来のデータベースとは、比べ物にならないほど高くつく。これも大きな導入障害になる。四番目に、中央機関がないことのメリットよりデメリットのほうが大きい点だ。

 中央機関がないことのメリットばかりが宣伝されているが、実際は中央機関のシステムに比べ、効率の悪さ、合意の難しさなどが存在する。五番目に、セキュリティ問題である。たとえば、ビットコインの場合、すでに検証済みのSHA-256をハッシュに使っている。しかし、量子コンピューターが登場すると、このアルゴリズムは破られるとされている。それに、開発者しかそれを保証できない、まだ検証されていないアルゴリズムが使われているのが現状である。それで、最近ではブロックチェーンのシステム上の脆弱性が原因で、ハッキング事件がすでに数件起こっている。

 最後に、51%問題だ。ブロックチェーンでは、コンピューターの過半数以上の承認を得られれば、不正なデータではないことが認められ、正常な取引となる。反対に承認が得られない場合は、不正なデータと認識され、ブロックチェーンに記録されなくなる。問題は、過半数以上のコンピューターが本来は異常なデータなのに、「正常」として処理した場合だ。このように現状ではブロックチェーンは大きな課題を抱えている。この問題が解決できるかどうかについては、もう少し時間の経過が必要になるだろう。

(了)

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