内戦の長期化が生んだポピュリズム~ウクライナ大統領選、人気コメディアンが圧勝
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ウクライナ大統領選挙で現地の人気コメディアン、ボロディーミル・ゼレンスキー氏が現大統領ペトロ・ポロシェンコ氏や元首相ユリア・ティモシェンコ氏に勝利した。出口調査では7割以上の得票率だったゼレンスキー氏は、コメディアンとしてロシアでも活躍した経歴の持ち主。近年は政治を題材にしたコメディー『国民のしもべ』シリーズに主演。政府の腐敗を糾弾して大統領に就任する歴史教師ゴロボロトカを演じた。
このテレビドラマシリーズは第1シーズン、第2シーズンともに各24話が制作された人気作。しかし、第3シーズンが大統領選挙の投票日前に立て続けに公開されるなど、選挙のアピールに使われたとの批判もある。
同作に対する批判はほかにもあり、その1つが「ウクライナの政治家がロシア語で演説している」というもの。ユーロマイダンと呼ばれた反政府運動から国全体を巻き込む騒乱に発展した2014年2月以降、ウクライナの政治家は公の場でウクライナ語を話すことが一般的になっていた。
旧ソ連圏における国語の復興は常に民族主義運動の中心にあったが、それは経済が現在もロシア連邦との関係が前提で展開していることの裏返しでもある。ウクライナも同様で、同国東部をめぐる紛争はロシアにとっての軍事利権が同地帯に集中しているためだとする見方は根強い。
2015年に同国政府と東部の親ロシア派の間で停戦協定が交わされたものの、実質的には機能しておらず、ドネツク州およびルガンスク州では散発的に軍と分離独立派の間で戦闘が起こっている。
ゼレンスキー氏の政治能力は未知数。それでも選ばれたのは、ウクライナの内戦終結のためにロシアと話し合うと宣言したほか、ロシア・メディアの入国解禁などロシアとの融和を目指していることと無関係ではない。
同氏の今後について、ロシア紙プラウダは、「彼はメディアを使って強力な『情報戦』の戦端を開くだろう」と報じている。
ウクライナの新大統領は「国民のしもべ」か、それともメディアで国民を操る扇動者か。同国の今後に注目が集まっている。
【小栁 耕】
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