世界を変える「ブロックチェーン」と日本発の可能性(1)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
国際関係やビジネスのあり方を一変させる可能性を秘めた技術開発が急展開を見せているが、その主役は「ブロックチェーン」だ。国際政治情勢も劇的な動きをみせるなか、この革新的な技術をめぐって、早くも各国がしのぎを削り始めている。しかし、日本はスタートダッシュに遅れてしまっているようだ。
「皆で使える台帳」
ブロックチェーンについては、日本では昨年、取引価格が80%も急落したため、投機的な印象が強いビットコインと錯覚されることもあるが、ビットコインを可能にした基盤技術がブロックチェーンであり、ブロックチェーン技術そのものは中立的なものである。
では、ブロックチェーンとはどんな技術なのか。一言でいえば、「皆で使える台帳」のこと。たとえば、銀行の台帳は銀行と預金者しか使えない。しかし、ブロックチェーンはインターネットにつながっていれば、「誰でも、どこからでも使える」のが特徴でもあり、強みでもある。
要は、皆のパソコンのパワーを少しずつ分け合ってつくられる情報管理・活用システムといえよう。「P2P」の代表選手と言っても過言ではない。結果的に、多く分けている人には多くの収入が入る仕掛けでもある。収入が得られるので、皆がパソコンのパワーを分けてくれるインセンティブも働くというものだ。
しかも、すべての取引記録を皆でもち合い、支え合っているため、相互の監視が効くことになる。いうまでもなく、パワーもデータも皆でもち合っているので、たとえ1個が壊れてもブロックチェーンは壊れることがない。「ブロック」とはそうした台帳の1ページにあたる。それらがつながって「チェーン」を形成するのである。
ヨーロッパではエストニアがブロックチェーン技術の活用先進国として知られる。選挙の投票においても、医療機関を受診する際にも、ブロックチェーンを生かした個人認証カードが機能している。そのため、日本をはじめ世界各国から視察団が引きも切らない。しかし、ブロックチェーン技術を活用している国はエストニアに限らない。
たとえば、「第二のドバイ」と異名をとる中央アジアのアゼルバイジャンでもブロックチェーンの実用化が急ピッチで進んでいる。具体的には、不動産登記、電子公証人サービス、公共料金の徴収など、実に多方面にわたる分野で日常生活に利便性をもたらしている。
こうした実用化の動きを見て、世界の多くの国々で新たなビジネス基盤づくりの実証実験が進展するようになってきた。何と、原油や天然ガスの商品取引や芸術品のオークションにもブロックチェーンの利用が始まったのである。オークション大手のサザビーズでは贋作防止にブロックチェーン技術を最大限に生かしている。
実は、ブロックチェーンの出発点は2008年に起こったリーマン・ショックだった。金融業界への不信感が高まり、信頼できる「分散型の金融システム」への期待が高まったことが背景にある。すなわち、「皆で支え、皆で使い、皆で見張る、そして改ざんができない台帳」をつくろうという動きが生まれたわけだ。まさに金融界における革命的な動きといえるだろう。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸 (はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。16年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見~「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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