2024年12月27日( 金 )

「シェアサイクル」は新たな交通インフラになるか?福岡市が実証実験する「メルチャリ」

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アパホテル〈博多駅前〉に設置されたメルチャリ専用ポート。

 福岡市は18年6月から、「福岡スマートシェアサイクル実証実験事業」と称して、天神、博多駅、ウォータフロント地区から半径約2kmのエリアを対象に、民間事業者と共同で提供するシェアサイクル実証実験を行っている。事業者公募による提案競技の結果、自動車流入抑制や都心部の回遊性の向上などの実証実験の目的との整合性が高い提案であり、都心部への積極的なポート(駐輪場)設置・地域事業者との連携を提案した(株)メルカリが選ばれた。同社はサービス名を「メルチャリ」として運営している。

 メルチャリは、専用のスマホアプリを使って、空き自転車を探し、QRコードを読み込んで、自転車をレンタルするサービス。利用料金は1分4円。予約はできない。利用後は、最寄りのポートに返却する。利用方法は、先行他社と大差はない。ポート以外への乗り捨ては基本的にNGで、繰り返す利用者には利用停止措置をとる場合もある。一方、ポート以外に乗り捨てされた自転車をポートに戻した場合は、「お手伝い」として、15分間無料で利用できるインセンティブがある。

 メルチャリは、20インチ、3段階ギアの仕様で、GPSを内蔵。「Merchari」のロゴが入った赤い車体が特徴だ。電動アシスト機能はないが、平坦な福岡都心部には必要ないという判断だろう。シェアサイクル専用の自転車保険には加入しており、対人対物の補償を受けられる。メルカリによれば、「現時点で大きな事故は発生していない」という。

 メルカリは、福岡市でシェアサイクルを始めた理由について、「リアルな場でのさらなるシェアリングエコノミー促進を目指し、事業開始した。福岡は、コンパクトなまちに生活から観光まで多様な移動のシーンがあり、また平坦で自転車の移動に適していることが背景としてある」と説明する。

 運用開始から約1年。メルカリでは、利用者数などの具体的な数字は明らかにしていないが、ポート50カ所、自転車400台程度だった運用開始時に比べ、利用実績は約10倍に拡大している。サービスエリアの拡大については「需要に応じて検討したい」としている。実証実験を手がける福岡市総務企画局Society5.0の担当者は「利用者からは『安くて便利、良いサービス』と評価が高い。サービスの社会実装により、社会課題の解決につながれば」と期待を寄せる。

 福岡都心部の自転車利用の課題でいえば、自転車の放置だ。市道路下水道局自転車課によれば、毎月平均42台のメルチャリが撤去されている。利用可能台数の減少はサービスの低下につながる。利用停止措置にどこまで抑制効果があるのかなど、メルカリの実証実験後の対応が気になるところだ。

 福岡市都心部は、平坦なため、地形的に自転車の利便性を発揮しやすいという特徴がある。メルチャリ以外にも、「ecobike」や「COGICOGI」「HELLO CYCLING」などのシェアサイクルが運営されている。シェアサイクルという新たなビジネスが軌道に乗れば、福岡市の魅力向上も期待できる。シェアサイクルが今後、ビジネスとして確立し、新たな交通インフラのカタチとして定着するかどうか、注目される。

【大石 恭正】

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