日建設計・JSCAの最凶タッグが耐震偽装を事実上認めた!(中)
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――国内で最も大きな設計事務所である日建設計が、なぜ、構造計算の重要な係数を偽装したのでしょうか?
仲盛 私にも理由はまったくわかりません。公設市場にはシビアな建築コスト削減は求められていないと思います。建築コストを抑えることよりも、仮に大地震が発生した場合でも市場の機能を損なわず都民に食材を提供できるだけの耐震性を優先すべきです。
豊洲市場の構造計算においては、厚さ150mmの押えコンクリートを10mmとして計算を行うなど、経験の浅い技術者でもあり得ないようなミスも指摘されていることから、構造計算担当チーム(この規模の建物なので担当者は複数と推測される)のなかに経験の浅い未熟な技術者がおり、未熟な担当者の構造計算をチェックする体制も不十分であったということも、可能性の1つとして考えられます。
構造計算に使用されたプログラムは日建設計の独自開発によるものであり、外部の人間はプログラムの詳細を知らないため、審査する場合にも計算内容に深く入り込めないことも考えられます。そのようにブラックボックス的な構造計算となっているので、豊洲市場以外の日建設計が設計に関与した建物も豊洲市場と同様の問題を抱えているかもしれません。
先程出た押えコンクリートの厚さを150mmとすべきところを10mmと誤って構造計算した結果が保有水平耐力比1.25です。その後、諸条件を修正して計算した保有水平耐力比が1.34とより大きな数値となっています。建物の重量が増えれば保有水平耐力比は小さくなるはずですが、日建設計の再計算では数値が大きくなっています。これには大いに疑問を抱いています。
――ほかの建物への影響も考え、日建設計は弊社からの質問に回答することをためらっているのかもしれません。次に、Ds以外の質問のうち「ピン柱脚の鉄量の不足」とは具体的にはどれほどの不足なのでしょうか?
仲盛 ピン柱脚とは、前述した鉄骨が基礎部分に埋め込まれていない形式の柱脚です。鉄骨柱の最下部であるベースプレートの下には鉄骨が存在していないので、この部分で急激に構造耐力が減少します。そのため、柱脚が壊れないよう 1階柱脚部分の鉄量(鉄筋とアンカーボルトの断面積の和)が1階柱頭(1階柱の最上部)の鉄量(内部の鉄骨と鉄筋の断面積の和)と同量以上であるべきと定められており、柱脚部分の急激な耐力低下を防止するよう規定されています。豊洲市場水産仲卸売場棟の1階柱脚の鉄量は柱頭の56%しかなく44%も不足した状態となっているので、大地震が発生した場合、1階柱脚部分から壊れる可能性は十分に考えられます。
――次に、「市場問題プロジェクトチーム会議へ提出資料の加工」は、日建設計がPT会議に提出した資料に加工をしていたということですね?
仲盛 私が非埋め込み形柱脚の場合の1階Dsの偽装を指摘したことが原因だと思いますが、日建設計が市場問題PTにDsに関する説明資料を提出しています。この資料は柱脚メーカーのカタログに日建設計が独自に書き込みを行った資料であり、あたかも、メーカーのカタログが日建設計の構造計算が適正であると裏付けているかのような印象を与えています。メーカーのカタログだけを見ると、日建設計の構造計算を裏付けるような表記はありません。
このようなインチキ資料を、構造のプロである森高JSCA会長が見破れないはずはありません。しかし、現実には、日建設計のインチキ資料を黙認しました。森高会長は安井建築設計事務所という大手の設計事務所の執行役員です。日建設計と同じような大手の設計事務所の立場とすれば「明日は我が身」という思いだったと思います。ほかの市場問題PT委員にしても、豊洲市場の設計偽装を隠ぺいする立場の委員ばかりであり、PT会議において問題提起した高野一樹建築士の発言が会議途中から封じられている様子はPT議事録でも確認できます。まさに結論ありきの市場問題PTだったといえます。
――次に、「層間変形角」に関して、法令との関係など教えてください。
仲盛 層間変形角とは、地震や台風などの水平力を受けた建物が水平方向にどれだけ変形するかを変位量と高さの割合で示したものです。たとえば高さ10mの建物が4cm変位した場合、変形角は4cm÷1000cm=1/250となります。建築基準法では層間変形角を1/200以内と定めています。分数での表記になっているので、たとえば1/190であれば「1/200を超えているのでNG」ということになります。
水産仲卸売場棟の層間変形角は最大で「1/151」となっており建築基準法の規定をはるかにオーバーしています。
――次に、「JSCA会長としての責任ある言動」について教えてください。
仲盛 JSCAというのは建築構造技術者を会員とする業界団体であり、公的な機関というわけではなく一般社団法人です。市場問題PTでは建築構造の専門家としてJSCAの森高会長を委員としてメンバーに入れていました。構造の専門家としての公正中立かつ工学的知見に基づく意見を期待されていたものと信じたいところですが、現実は、設計の偽装を行った日建設計の擁護に終始していました。
先程述べたように、第2回市場問題PT会議において日建設計の代表(自己紹介で「日建設計で構造設計の代表を務めている常木康弘です」自ら挨拶)として説明を行った常木康弘氏はJSCAの副会長を務めていました。これだけでも不信感を抱かざるを得ないのですが、常木氏はJSCAの次期会長に内定しています。
東京都の重要な施設である豊洲市場の設計において偽装を行った設計事務所の構造の責任者が業界団体の会長に就任する資格があるのでしょうか?データ・マックス社からの質問書に対して「回答を控える」という無責任な態度を示した日建設計の構造設計の責任者が業界団体の会長に就任する資格があるのでしょうか?
日建設計の常木氏がこのままJSCAの会長に就任するようであれば、このJSCAという団体には存在意義はありません。JSCA会員に対して申し訳ないという気持ちはないのか?日建設計の設計偽装を隠ぺいするためにJSCAの会長に就任することになったと勘繰られても仕方ありません。
JSCA会長宛てに送付した質問書に対しては何ら回答がなかったということですが、次期会長が設計偽装の張本人なので回答できないのだと理解せざるを得ないですね。
日建設計が質問書への回答を避け、JSCAが何も回答をせず黙殺したということは、「結論ありきのプロジェクトチームで安全という結論が出れば違法な設計であっても肯定される」と二者が認めたということです。私は、日建設計やJSCAが豊洲市場の設計およびPTで犯した失敗を認め、今後同様の失敗が起きないよう業界に対して注意喚起することを期待していましたが、その期待は見事に裏切られました。この方々にモラルやコンプライアンスを求めることは無理なのかもしれません。
第2回市場問題PTにおいて森高委員(JSCA 会長)が日建設計常木氏(JSCA 副会長)を擁護した場面(JSCA 会長と副会長による茶番劇)
高野氏 いろいろな手法があることは私も知っています。ただし、申請時は、Ai分布での検討という方法を選んだのですから、それを途中でルールを変えるというのは話が違うのではないですか。
森高専門委員 ここで議論しているのは、申請時の手続きなど、そういう考え方もさることながら、今、一般にご覧になっている方は、この建物がきちんと耐震安全性が確保されているかどうかということです。それについては、ここできちんと結論を出したいと思っています。
常木氏 今、申請時と違うというお話をされましたが、私どもは、申請時と変えているつもりはなくて、申請時の方法でいいことを説明するためにモーダルということを説明しているだけで、モーダルで行いますということではなくて、もともとあそこの部分は固いものなので、確認申請のなかでも基礎として認めていただいて設計しています。ですから、変えたわけではないので、今のご発言は少し違うと思いました。
森高専門委員 わかりました。エンドレスになってしまいますので。
高野氏 はい。ただ、1点確認します。申請時の境界条件と現状の境界条件が違うことは、それでよろしいですね。要は、基礎梁の中心レベルでの拘束はないと判断されていますから。
常木氏 いえ、それも変わっていません。地下の地震力は、周辺を拘束しているから震度0.1 と言っているわけではなく、地下の深さに応じて震度をさらに減らしていく場合はそうですが、0.1 自体は基本的には地下の拘束条件を期待しているわけではありません。
森高専門委員 すみません、それは議論が繰り返しになってしまうので。
高野氏 構造の階高の取り方も変わってきますよ。動く床、動かない床で、それは全然違うと思います。
竹内専門委員 そこもそうですが、大変申し訳ありませんが、森高さんの方で、日建設計の説明に対して、法律的にどう判断できるかという構造家の方としてのご意見を言わせていただいていいですか。
高野氏 はい、どうぞ。
竹内専門委員 そのうえで、ある疑問点があって、そこは専門家同士での検討を行うということで、まずは、森高専門委員、本日の説明のことに対してどう判断されるか、一言コメントをお願いします。
森高専門委員 もともとの構造設計のモデル化の思想は聞きました。高野さんが指摘されている、フーチングが突出している影響はどうだという話も、補足的にモーダルアナリシスでチェックされて、上についての地震力は変わらないという検討をされていることは、確認申請書ではなくて、わざわざここで議論するために検討されたと認識しています。繰り返しになりますが、日建設計は設計の責任を負う立場で安全性を宣言されており、私も別に問題はない、同意します。
(つづく)
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