レアアース問題の深層(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
先端製品の需要が伸びている一方で、供給は限られているので、最近価格が急激に上がっている。そのほかに、レアアースの用途は広く、風力発電、EV、インバーターエアコン、エレベーター、ロボット、サーボモーターなどに活用されている。とくに、これから本格的に普及が予想されている電気自動車の心臓に使われているモーターには、磁石が使われているが、その磁石には保磁力を高めるためレアアースが使われている。
レアアースを活用した磁力の高いモーターは、自動車、家電、HDDなどに使われている。韓国はレアアースの原料を中国から輸入しているし、加工された材料は日本から輸入している。もレアアースの輸入ができなくなると、先端産業においては甚大なダメージを受けることになる。しかし、今のところ代案がないのも実情である。
中国はレアアースの最大生産国である。昨年、米国が輸入したレアアースの78%は中国産である。中国はレアアースを戦略的資源と位置付け、約30数年前に外国による採掘を禁止した。中国は軽希土類が余剰で、多くを輸出している。一方、中・重希土類は中国国内でも不足しており、輸入で穴埋めしている。だから、レアアースの武器化は厳密にいうと、「中・重希土類」のことである。
レアアースは実は中国だけでなく、アメリカを始めさまざまな国で生産されていた。しかし、中国は他国とのレアアース競争で優位に立つため、1989年から1990年代にかけてダンピング攻勢をかけた。その結果、中国以外のレアアース鉱山は採算が合わなくなり、軒並み閉山に追い込まれた。その結果、レアアース市場は現在のように中国に依存せざるを得ない状況になってしまったわけだ。
中国がレアアースの輸出制限を実行に移すと、米国にとっては、EVだけではなく、ハイテク産業、軍需産業への影響は避けられない。米国だけでなく、日本、韓国などにも先端産業に多大な影響がおよぼされることになるだろう。
日本では尖閣諸島の経験以降、レアアースの量を減らしても同じ効果が出たり、レアアースをまったく使わない代替材料の開発に取り組んだりしており、その開発に一定の成果が上がっているようだ。日本だけでなく、先進各国では同じように開発に取り組んでいる。そのような開発が成功すれば、中国のレアアースの武器化は、意味をなさなくなるだろう。
中国の輸出制限は一方ではレアアースの価値をなくしてしまう側面ももっているので、中国のレアアースの輸出制限は長い目で見ると、自分の首を絞める結果になりかねない。歴史は課題が現れ、それを解決していくことの繰り返しであると言っても過言ではない。米中貿易戦争がどのように推移していくのか世界の注目が集まっている。
(了)
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