福岡県の8信用金庫~その経営統合の行方を検証する(5)
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【表1】を見ていただきたい。福岡県の信用金庫と地銀の貸出金残高順位表である。信金は18年3月期、地銀は19年3月期決算を検証していくことにしたい。信金は19年3月期決算から3カ月経過しているにもかかわらず、遠賀信金以外は経営成績をまだ公表していない。遠賀信金の岡部憲昭理事長は財務省東北財務局長を歴任しており、信金業界の情報公開に対する認識の甘さに警鐘を鳴らしているようだ。
(1)信用金庫の貸出金残高順位表
~この表から見えるもの~
貸出金残高1位は福岡ひびき信金で、前期比+51億円の3,379 億円(前期比1.5%増)。
・2位は飯塚信金で、前期比+20億円の1,401億円(前期比1.4%増)。
・3位は遠賀信金で、前期比+32億円の1,273億円(前期比2.6%増)となっているが、19年3月期の貸出金は前期比▲13億円の1,260億円(前期比▲1.0%)と減少している。ここまでが貸出金残高1,000億円以上。
・4位は筑後信金で、前期比+22億円の949億円(前期比2.4%増)。以下、大牟田柳川信金、福岡信金、大川信金、田川信金となっているが、大川信金だけが前年比▲6億円となっている。
福岡県の8信用金庫の預金残高は前期比395億円増加しているものの、貸出金は前期比わずか161億円にとどまっている。遠賀信金の19年3月期の貸出金は前期比マイナスとなっており、信金全体の貸出金も、大きくマイナスとなっているのではないだろうか。
預貸率を見ると、信金で一番高いのは筑後信金で62.39%。続いて福岡信金の61.51%、遠賀信金の60.62%で、ここまでが60%台。
・以下、飯塚信金58.94%。福岡ひびき信金50.48%。田川信金48.82%。大川信金48.15%。大牟田柳川信金が最下位の47.69%。50%台が2金庫、40%台が3金庫となっている。貸出金が伸びず厳しい状況にあることが読み取れる。
(2)地銀の貸出金残高順位表
~この表から見えるもの~
貸出金残高1位は福岡銀行で、前期比+3,858億円の9兆8,978億円(前期比4.1%増)。19年3月期と18年3月期の比較ではあるが、福岡銀行の前期比増加額は福岡ひびき信金の貸出金残高3,379億円を大きく超えている。
・2位は西日本シティ銀行で前期比+2,960億円の7兆1,322億円(前期比4.3%増)となっており、この2行が1,000億円を超えている。
・3位は北九州銀行。以下、4位筑邦銀行、5位福岡中央銀行となっているが、貸出金増加額は300億円以下と低迷しているのがわかる。
福岡銀行の貸出金シェアは51.9%。西日本シティ銀行は37.4%。両行合わせると89.3%と9割近くあり、圧倒的な強さであることが読み取れる。
【表2】を見ていただきたい。福岡県の信用金庫と地銀の当期純利益順位表である。
~この表から見えるもの~
信用金庫の18年3月期の当期純利益合計は、前期比▲615百万円の50億15百万円(▲10.9%)。前期比プラスが2金庫で、マイナスが6金庫。しかし前期比プラスだった遠賀信金の19年3月期は前期比▲49百万円の971億円(前期比▲4.8%)となっており、信用金庫全体の19年3月期の当期純利益は大きく減少しているものと推測される。
地銀の19年3月期の当期純利益合計は、前期比▲35億16百万円の741億円26百万円(▲4.5%)。地銀5行のうち、福岡銀行を除く4行が前期比マイナスとなっている。
<まとめ>
日銀のマイナス金利政策によって信金・地銀の収益は厳しい状況にあることがわかる。収益を生み出す貸出金などを含め、信金と地銀のスケールの違いが読み取れる。信金は急いで合併を進めて経営の効率化を図らないと、存在意義そのものが問われることになるのではないだろうか。
(つづく)
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