なぜグランドメゾンは福岡で圧倒的ブランドなのか(後)
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積水ハウス(株)
なぜグランドメゾンは福岡市で強いのか
グランドメゾンの特徴はその外構にあるといっても過言ではない。植栽などで深く覆われた外観は、歩行者からは一見してマンションに見えない場合もあるほどだ。
たとえば百道浜Ocean&Forestでは、駐車場の上部が木々で覆われ、さながら里山の森のようになっている。年月を経るほど風格を増す“経年美化”を意識した外構は、その土地固有の在来種の木々だけでなく自然石の石積みにも現れている。戸建事業から始まった同社の住宅事業を象徴するように、「グランドメゾンは戸建の集合体である」という設計理念のもと予算をかけ、高級感を演出しているのだ。とくに福岡では百道浜以降、脈々とこの思想は受け継がれており、「グランドメゾン=高級」というブランドイメージを見事根付かせた。
「地場が強い」といわれてきた福岡市のマンション開発市場において、積水ハウスが強固なブランドイメージを継続してきたのは、福岡マンション事業部・吉崎道夫執行役員の存在が大きい。同氏は百道浜の開発のころから福岡でグランドメゾンブランドに関わってきた。19年1月期(連結)の売上高に対するマンション事業売上はわずか4.14%、営業利益では3.38%にとどまるセグメントでしかないが、とくに福岡市においては「グランドメゾン」の存在感が数値で圧倒する戸建、賃貸住宅、賃貸管理事業をしのぐのはこれまでの福岡での歴史がそうさせるのであろう。
ブランディングは一朝一夕にはできない。30年にわたって「外構を生かしたマンションづくり」を徹底してきたことが福岡で強固なブランドイメージをつくり上げたのだ。また、徹底できた要因は、その間、吉崎執行役員が福岡マンション事業部を牽引してきたことだろう。結果を評論するのは簡単だが、アイランドシティのように辛抱強く継続するには資金力も必要だ。積水ハウスが福岡でブランドイメージをつくり上げることができたのは、資金力、地元の責任者の両輪がうまく噛み合ったからであり、それを辛抱強く続けることができたからだ。
16年1月に用地を取得していた田中ビル跡地(福岡市中央区大名2丁目)は、1月に大和ハウス工業(株)が完成させたプレミスト天神赤坂タワー(220戸)にも近く、福岡都心に両社のマンションが建ち並ぶかと思われたが、プレミストと比べて用地が狭いことなどから、マンション開発ではなく、収益物件の開発に切り替えたようだ。これも「グランドメゾン」ブランドを保つための戦略だといえる。
計画中のものでは、グランドメゾン大濠公園2020(20戸)、さらに明治通り沿いを歩いて数分のところでも広い用地を確保しており、間もなくプロジェクト化されるとみられる。福岡市中央区、早良区の一部、南区、アイランドシティで数多くのマンションを供給してきた同社は、とくに大濠公園周辺で数多くのグランドメゾンを供給してきたことも高級・高品質なイメージをつくり上げた要因だろう。「1haあれば、まちはつくれる」と同社の吉崎執行役員は過去の取材で語っていたが、大濠公園周辺では、公園の植栽を借景とすることで、グランドメゾンのブランド力に活用した。
長く続く低金利やリーマン・ショックの反動などによって、福岡のマンション販売市況は活況を呈してきた。しかし、すでに「動きが鈍ってきた」という声も多く聞かれるようになっており、数カ月先の動向は読めない状況だ。販売物件についての広告はせずとも紹介などで早期完売をはたしてきたグランドメゾンだが、間もなく到来するであろう販売不況に対し、多数の供給を予定している同社がどのように対応するのか、それは結果も含めて地場のマンションデベロッパーとは異なるのか、注目したい。
(了)
【永上 隼人】<COMPANY INFORMATION>
代 表:仲井 嘉浩
所在地:大阪市北区大淀中1-1-88
設 立:1960年8月
資本金:2,025憶9,120万円
売上高:(19/1連結)2兆1,603億1,600万円関連キーワード
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