アスクルとヤフー、個人向け通販「ロハコ」をめぐり対立 ソフトバンクの子会社化で「ヤフーが変わった」(前)
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オフィス用品大手アスクルと、同社株の45.13%を保有する筆頭株主であるIT大手ヤフーが、アスクルがもつ個人向けインターネット通販事業「LOHACO(ロハコ)」をめぐって対立している。8月2日に開催されるアスクルの株主総会で、ヤフーはアスクルの岩田彰一郞社長の退任を要求した。両社はどこでボタンを掛け間違えたのか。
ロハコの物流センターの大火災が躓きの石
「アスクルの成長事業が乗っ取られる」。7月18日に開かれたアスクルの記者会見で、岩田彰一郞社長からは強烈な言葉が飛び出した。ヤフーにロハコ事業の譲渡と退陣を突き付けられた岩田社長は、ヤフーを強く批判した。
岩田社長はアスクルの創業者だ。1950年8月生まれの68歳。慶應義塾大学商学部を卒業。ライオン油脂(現・ライオン)を経て86年に事務用品メーカーのプラスに転職。93年オフィス用品通販のアスクル事業部の開始にともない、アスクル事業部長。97年4月、プラスよりアスクル事業の営業譲渡を受け、アスクルを設立、岩田氏は社長に就いた。
アスクルとヤフーは12年4月、資本・業務提携を結び、アスクルは個人向け通販「ロハコ事業」を始めた。アスクルはヤフーからの出資金などを基に200億円を注いだ東日本エリアの物流センターでつまずいた。両社の提携の象徴である埼玉県の物流センターが17年2月に火災を起こして、個人向け通販が一時中断に追い込まれた。
アスクルは、オフィス向け通販「アスクル」と個人向け通販「ロハコ」が2本柱の通販会社。19年5月期連結決算は、売上高が3,874億円(前年同期比7.5%増)、営業利益が45億円(7.8%増)と増収増益。しかし、物流センターの減損損失などで、純利益は4億3,400万円(90.7%減)と大幅に低下した。中でもロハコ事業は14年5月期から赤字が続いており、19年5月期には92億円の赤字となった。
19年1月、ヤフーがアスクルにロハコの事業譲渡を提案した。加えて、アスクルの11.63%をもつ2位株主で、同社を生み落としたプラスが、赤字のロハコ事業を切り離して、法人向けに特化することを求めた。だが、岩田氏は「個人向け事業は成長の柱になる」として、ロハコ事業のヤフーへの譲渡を拒否。そのため、筆頭株主のヤフーと2位のプラスが、株主総会で岩田氏の再任を拒否する騒動に発展した。
ヤフーの経営体制が変わった
それにしても、良好な関係にあった両社が、どうして敵対するようになったのか。
〈「向こう(ヤフー)の経営が変わってから、関係が変わった」。岩田氏は、良好だったヤフーとの関係が悪化した経緯についてそう口にした。両社の提携はヤフーの宮坂学前社長のもとで始まった。岩田氏は「(宮坂氏と)会った瞬間に信頼できると思ったし、一緒にずっとやってこられた」と説明した。〉(朝日新聞7月19日付朝刊)
18年6月、ヤフーの社長は宮坂氏から川辺健太郎氏に交代。さらに、今年6月に、ソフトバンクグループから通信子会社ソフトバンクに親会社が交代し、ヤフーの経営体制が大きく変わった。ヤフーに対するソフトバンクの影響力が強まった。
〈岩田氏は、一連の事態にソフトバンク側の意向が働いているかと問われ、「正直わからないが、(取締役会にソフトバンクの出身者がいる)ヤフーのカバナンスの構造からいってもも、すべての意思決定を川辺さんがなさったのか」述べ、ヤフーだけの意向ではないとの見方をにじませた。〉(同上朝日新聞)
この指摘は納得できる。ソフトバンクグループは、この半年余で劇的に変化したからだ。
(つづく)
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