2024年12月22日( 日 )

次世代通信技術5Gのもつ危険性に目をつむる日本政府(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

次世代通信規格「5G」を日本でも導入するというが、心配の種が尽きない。2020年春からの本格導入を目指し、総務省はNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天モバイルへ電波(周波数帯)を割り当てた。去る4月10日のことだった。


日本も他人事ではない

 メディアでの報道も加熱しており、現行の4Gと比べ、「通信速度や容量が100倍以上になる」といったメリットが強調されている。たとえば、「スマートフォンに2時間の映画をたった3秒でダウンロードできるようになる」といった具合だ。

 はたまた、将来的には自動車の自動運転や医師による遠隔診断や手術にも応用できるとのこと。とはいえ、現行モデルのスマホでは5Gサービスは利用できない。新たな端末を購入する必要もあるし、データ量が増えるので通信料金も上がるだろう。通信機器メーカーや通信業者にとってはおいしい話に違いない。

 しかし、日本では5Gが人体におよぼす健康被害の危険性が無視されているのが気がかりだ。なぜなら、本年4月2日、ベルギーの首都ブリュッセルでは5Gの導入を禁止する措置が発表されたからだ。ほかの欧州諸国でも追随する動きが出始めており、イタリア政府はすでに5Gの使用を制限する裁判所の決定を告知しているほどである。

 実は、これらの国でも欧米諸国では5Gに対する規制を強化する動きが加速している。不思議なのは、こういった動きが日本ではまったくと言っていいほど報道されないということだ。海外では、前述のベルギーやイタリア以外の、スイスのボード市やアメリカのサンフランシスコ市でも同様の決定が相次いでなされている。日本だけが能天気に構えていて大丈夫なのか。そもそも欧米諸国が5Gを警戒しているのはなぜなのか。その理由を検証する必要があるだろう。

 答えは簡単で、5Gの基地局がスマホに送信する電磁波が人体に悪影響を与えることが各国の医療関係者の研究によって次々と明らかになってきたからだ。5Gにともなって発生する電磁波は「新たな環境と人体に対する汚染」との受け止め方が広がりつつあることは、日本にとっても他人事ではないはずだ。

欧米各国は危険視

 2019年から2020年にかけて、5G用の衛星がアメリカと中国を中心に2万機以上も打ち上げられる予定である。現在軌道上を周回する通信衛星の数が10倍以上に増えることになる。そして地上には200mおきに基地局が設置される。そうした膨大な数の基地局から出される電磁波がスマホを通じて利用者の肉体に接触、侵入し、健康被害をもたらす可能性が指摘されているのである。

 欧州各国では遺伝子組み換え作物(GMO)の人体への悪影響に鑑み、その使用を厳しく制限してきたが、新たに5Gに関しても人体への悪影響を防ぐために使用禁止や制限措置を取り始めたわけだ。

 その根拠に挙げられているのは、2005年から始まった欧米各地の医療・研究機関での「マウスを使った電磁波の人体への影響」に関する研究結果だ。

 この研究結果により人の皮膚や目、そして生殖能力への悪影響が懸念されている。実際に、すでに5Gの基地局が設置された周辺では相次いで住民の健康被害が報告されている。

 最もよく聞かれる問題は不眠症や偏頭痛である。たとえば、スイスのジュネーブで暮らすヨハン氏は11年間ニューヨークで芸術活動を続けた後、故郷のジュネーブに帰ってきた。そして半年後に住居のそばに5Gのアンテナが設置され、それ以来、夜眠れなくなったという。曰く「生まれてこの方、電子機器に囲まれてきたが、眠れないということはなかった。ところが、今では自宅にいるとオーブンのなかに閉じ込められたような気持ちになる。安心できず、幽霊に囲まれているような気分に襲われる」。

 そうした体験をフェイスブックで紹介すると、近隣の住民からも「最近、この近所に5G用のアンテナが3本立てられた。それ以来、頭痛や疲労感がひどい」といった悩みが殺到するようになったという。ヨハン氏自身も静脈洞炎に苦しむ毎日だ。その原因が5Gの電磁波との診断は出されていないが、何らかの関連があることは疑いようがない。

 そこで彼らは市役所や電磁波被害者の救済活動を行うNGOに連絡を取り、改善に向けての問題提起を行うようになった。こうした人的被害を受け、ヨーロッパでは「緑の党」や「人間の絶滅に対抗する市民」と銘打った環境保護団体などが、5Gの実態調査や被害救済活動を始めている。

 すでに紹介したが、ベルギーのブリュッセルでは5Gの実験、導入が全面的に禁止されることになった。また、同じ時期、スイスでは放射線のもたらす健康被害を調査するシステムが完成するまで、新たな5Gの設置は延期する方針が決定された。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。16年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見~「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。

 

(中)

関連記事