北洋建設総帥・脇山章治氏の次なる戦略は?(4)
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閉鎖性その2――大躍進
別資料の北洋建設の直近10期の売上推移を参照されたし。2007年10月期において110億円の完工高をあげて以降、110億円台を下限にして、120億、130億、140億、150億円と安定的上向を保っている。収益も堅実に積み重ねているのだ。要約貸借対照表を眺めても実質無借金である。現預金も19億円近く積み上げているのだ。業界では上村建設に次ぐ第二位の地位を確保した。
どうして、このような躍進の原動力を得たのか。このシリーズ(1)で紹介したように脇山総帥は「建設業界体質の30年遅れ」にショックを受けた。住友林業で鍛えられた合理的な思考の持ち主では業界持たれあい構造には我慢ができなかった。「この馴れ合い構造を打ち破る建設会社を創出しよう」と決断したのである。1983年同社に入社して以降、90年頃まで模索していた。90年を過ぎて実質的な会社の切り回しを行い98年2月に二代目社長に就任。ここから脇山章治氏の戦略展開が本格化した。その結果が、2005年以降の業績の推移である。
この業績推移を眺めただけでも脇山氏が業界随一の戦略家と評価したくなるのは当然であろう。同氏の原点は「請負を超える」ことに執着していることだ。そこから具体的な戦略に落とし込んだのが(1)PM事業(プロジェクトマネジメント)(2)FM(ファシリティマネジメント)CM(コンストラクションマネジメント)(4)木造本部の4部門である。
(1)PM事業部ではRC物件の企画、積算を行い(2)FM事業部では同社の得意とする改修工事など建設維持管理に関する業務を担当する。(3)CM事業部ではNTTグループから受注した基地局設置工事に関する施工管理が中心。(4)木造本部は住友林業から受注する木造戸建ての施工に手掛けている。「質素で謙虚で手堅く」を経営方針に掲げ、建設改修工事にも注力。様々な分野での専門技術者を事業部ごとに多く擁していることが、優良取引先との安定した受注につながってきた。この多面的な戦略の積み上げが功を奏して2005年頃から光り輝きだしたのだ。
看板が無いという問い合わせ殺到
「コダマさん!!あなたが『北洋は150億円企業になった』と騒いでいるが、そんなに北洋の現場の看板を見かけないぞ!!」という率直な質問を受けることが、たびたびあった。正直な発言である。確かに福岡地区だけみれば100億円を突破するような現場看板は見られない。改修工事の大きな看板は見受けるが10物件、20物件に及ぶ話ではないのだ。「現場もないのにどうして150億円のゼネコンなのか?」という素朴な疑問が、建設関連者に「北洋建設は閉鎖的な会社だな」という印象を残しているのだ。次回は売上の構成実態を明らかにする。
(つづく)
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