福岡県下2,200社の中小企業経営者の学びと成長を支援(後)
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(一社)福岡県中小企業家同友会
学びを求めて若い経営者が門を叩く
お互いを尊重し議論を尽くすことは、企業経営においても欠かせない。新内氏も「社内で決め事をするときも、多数決で物事は決めない。異なる意見にも耳を傾け、議論を行うことと、それまでにしっかりと、日頃から考え方を合わせることに注力しています」。
さらに、「同友会で学ばなかったら今の会社はないだろう」とまで言い切る。「会社のあり方や従業員との向き合い方について、同友会の先輩方から教えられたことを経営に取り入れていたから、リーマン・ショックや姉歯事件などで外部環境が悪化した時でも、社員が一丸となって会社を支えてくれた」と目を細める。
会活動を通じて会社がよくなったという、このような事例の積み重ねが会員増加につながっているようだ。「若い経営者が自ら同友会の門を叩いて入会されるケースが増えています。経営指針書を作成したいと入会を希望される意識の高い方が多いと感じます」と新内氏は最近の傾向を語る。
同友会は“よい会社づくりを通して地域社会への貢献”も謳っている。よい会社を構成し支えるのは人(社員)である。会が追求しているのは、人間尊重の経営「人を大切にし、人を生かす経営」であり、経営者が社員を一方的に指導するのではなく、一緒に育つ「共育」を実践し、社員とともに会社を伸ばすことを目指している。
最近でこそ、社員を大切にすることの必要性が働き方改革などで叫ばれるようになったが、同友会では1975年から人間尊重経営を打ち出していたのだ。
地域と連携して若手人材の確保を支援
経営指針書を作成し、売上や社員数など数字的なものを示すが、給与をはじめ休暇、作業環境、福利厚生、人間関係なども含めて“働く環境”について社員と一緒になって考え、つくっていくことを大切にしている。それは何よりも、働く人1人ひとりの能力をより発揮できる環境をつくることが、経営者の責任であるという考えからきている。
地域との関わりも重視する。東京など都市部に若者が流出している問題に対して、地域との関わりを深め、若者が地元に残りたくなるように自治体や地域を巻き込もうとしている。
たとえば、田川支部では高校生に経営指針書の作成を通して地域と中小企業を知ってもらう取り組みを行っている。地元3校の高校生に「今後の田川をつくる仮想の会社」を考えてもらい、その会社の経営指針書を発表してもらうというものだ。
このような経験を通して、地元の高校生が仕事や地域の中小企業、地域のことを理解し関心をもつようになると、地元の中小企業への愛着も強まる。結果として若者が地元に残り、中小企業を支える人材が増えれば、地域経済が活性化する力にもなるだろう。その主体者となるのが、地域の中小企業だ。
福岡県内での同友会会員は約2,200社で総売上高は1兆円を超え、約5万人を雇用するなど、地域での存在感はますます高まっており、福岡県をはじめ行政やほかの団体からも注目されているという。
経済のグローバル化に対応するためには、企業が競争力を強化するだけでなく、他社との連携によって強みをより強化し、弱みを補い合うことも必要な時代である。自立的で質の高い企業づくりを実践する同友会の社会的な役割はさらに高まることだろう。
(了)
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