【ラグビーW杯】日本代表、次がヤマ場
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ラグビーワールドカップ2019日本大会が9月20日に開幕し、オープニングゲームで日本代表はロシア代表に30-10で見事勝利した。試合内容などについては、各メディアですでに論評されているので割愛する。
各方面から多様な意見や分析などが報道を含めて飛び交っているが、何はともあれ、初戦、かつ開幕戦での勝利は、日本代表にとってすばらしい結果だった。
どのカテゴリー・レベルでも共通していえるのは、キックオフからの約10分は、超一流選手でも心身ともに最も苦しい時間帯で、心身の緊張で思い通りのパフォーマンスを発揮できないケースが多々ある。しかし、現在の日本代表は、この時間帯に得点され、そのままズルズル失点を重ねるような実力ではない。日本代表の31名は、自分を見つめて、冷静沈着に戦える選手たちである。
次戦は28日、小笠山総合運動公園エコパスタジアム(静岡県)でアイルランド代表と対戦する。アイルランドは現在、世界ランキング2位である。日本代表は、プール戦における最大のヤマ場を迎えることとなる。
「10月13日のスコットランド代表との対戦にピークをもっていくべき」という意見もある。それを決して否定はしないが、私見ではそれだとベスト8進出が極めて苦しくなると推察する。
アイルランド代表との試合後に対戦するサモア代表、そしてスコットランド代表は、かなりの強豪である。「直近でサモアに勝利しているから大丈夫」という胸算用はまったく通用しない。
通常のテストマッチとW杯では、各選手やスタッフのモチベーションや重圧は比較できない。筆者はW杯に出た経験はないが、以前出場経験がある選手やスタッフの話を総括すると前述のような心理状態で、どの代表も全身全霊で戦いに挑んでくる。胸算用通りに進むほど、W杯が甘くないことは断言できる。
では、日本代表がアイルランドに勝利できるかどうか?当然可能性はある。スポーツでは何が起こるか誰もわからない。しかし、日本代表がアイルランド代表に勝利する確率は、10%程度だろう。アイルランド代表が優勢であるのは、明白である。
アイルランド代表は初戦でスコットランド代表と対戦した。結果は、27-3でアイルランド代表が勝利。得点27点、4トライでボーナスポイントを獲得して勝ち点5。
注目すべきはスコットランド代表をノートライに封じたアイルランド代表のディフェンス力だ。ワールドラグビーが発信するデータによると、アイルランドのタックル成功率は94%(スコットランド代表は91%)で、この数値は極めて高水準である。
諸説あるが、国際レベルの試合でのタックル成功率の平均は、85〜90%で優秀だと評価される。この平均値を超えたアイルランド代表のディフェンス力が、ランキング2位の原動力といえよう。
また、アイルランド代表の自陣でのターンオーバー(タックル・ブレイクダウン時に相手ボールを獲得するプレイ)数は8で、こちらも優れた数値だ。アイルランド代表のディフェンスは鉄壁・堅守であり、そのディフェンスからアタックに転じて、各人のストレートランとタックルされても簡単に倒れないボールキャリー能力など、奇をてらうことなく基本に忠実な戦法で、得点を重ねていく。キックおよびパントもテリトリー占有率とボール獲得において効果的に駆使し、緻密に計算された戦法だ。世界で誰もが認める知将ジョー・シュミット氏のマネジメント力は秀逸である。
日本代表にとって難攻不落ではないものの、勝利するのが簡単でないことは明らかである。日本代表が勝利するためには、ロシア戦ではタックルの失敗が21回あったので、これを少なくとも10回は減らし、タックル成功率を86%から90%以上に引き上げることだ。またボールポゼッション(支配率)を50%から少なくとも70%に引き上げることも必要だろう。
それには、キックよりパスでのアタックを実践し、ボールキープ率を上げることである。あとは、アイルランド代表のバックスリー(左右WTB、FB)のタックル成功率がやや劣る(80%を下回っている)ので、そのポジションにアタックを仕掛ける戦法が有効になる。たとえば日本代表のマイボールのセットプレイ(スクラム・ラインアウト)で、ブラインドサイドをアタックするというオプションの多用も作戦の1つだろう。日本代表の大一番に注目したい。
【河原 清明】
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