2024年12月05日( 木 )

情報を共有、労働環境をデザインすることで社員の士気を上げV字回復からたしかな成長へ

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電気設備工事
(株)電究社

異色の経歴をもつトップ

代表取締役 直塚 知和 氏
代表取締役 直塚 知和 氏

 「他の設備工事業の経営者と少し目線が違っているかもしれません」。そう語るのは(株)電究社の代表取締役である直塚知和氏、43歳である。4代目社長になる。38歳の時に父親から事業を受け継いだというから今年で5年目だ。

 さて、目線が異なるとは? 実は直塚氏は高校と大学でデザインを学び、卒業後はデザイン事務所や印刷会社でグラフィックデザイナーとして活躍した異色の経歴をもつ。同社に入ったのは先代の誘いがあったからだが、そのころは現在の立場になるとは思ってもみなかったらしい。

 「同族会社ではないし、父から言われたのは電気設備工事もモノづくりだぞということでした。紙媒体が主だった広告デザインの世界がインターネットの急速な普及により縮小化していくなかで、将来性に戸惑いを感じていたこともあり、違うことをするなら今かな?と何となく父の誘いに乗ったんですね」。

 しかし、現場で汗を流したことで電気工事に対する興味は日増しに強くなったという。それから約10年。父親の引退を契機に、直塚氏の立場は現場から経営へと変わる。受け継いだ当初、会社には大きな負債もあり油断ならない状況だったが、そこからいわゆるV字回復へと突き進む。

社員が安心できる職場へ

先輩の丁寧な指導で後輩もどんどん力をつけていく
先輩の丁寧な指導で後輩もどんどん力をつけていく

 業績好調の背景を尋ねてみた。「情報共有と可視化でしょうか。たとえば会社の目標を個々に意識させることを徹底しました」。そして社員の本音を聞くことに努めたという。「定期面談で彼らが感じていることを丁寧にヒアリングしていくんです。プライベートな悩みも含めて(笑)。肝心なのは、聞きっぱなしではなく対応策を打ち出し解決に導くことです」。

 社員から見れば会社は自分を見てくれているという安心感になる。もちろん簡単ではないが、直塚氏は粘り強い。結果、起こった変化は社員たちの結束だ。

 「以前は目標もなく、ただ目の前の仕事を単純にこなしているような状態でした。私もそれが当たり前と思っていましたが、世間で業績が良いとされている会社は違った。気付いたのは整理整頓ができていない労働環境の悪さ、メリハリのない仕事の仕方などです。徹底的に労働環境を試行錯誤のうえ、見直しました。それは今もアップデート中です(笑)」。

 社内がまとまれば意識も顧客対応も変わってくる。冒頭の目線が違うという話。クリエイティブの世界で培った「課題を見つけ解決する」力をこの世界で生かしたのが直塚氏だ。労働環境をデザインする。たしかに独特な視点である。

若い社員たちはとても仲が良く一体感がある
若い社員たちはとても仲が良く一体感がある

負債消え自己資本比率向上

 電究社の業務は電気設備工事という範疇のなか、多岐に渡る。同業他社がある程度専門化し、マンションならマンション、店舗なら店舗というように仕事を限りがちな業界において、同社のように幅広く業務をこなせるところは少ない。

 「社員の配置を合理的に考え、それぞれの業務に特化した専門スタッフを用意することで実現しています。これが当社の強みの1つですね」。取引先から見れば実に頼れる存在だし、同社の側から見れば取引先が偏らず、社会情勢や施工ニーズの変化があったとしても柔軟に対応していくことができるだろう。今後の経営を考えるうえで何よりの安心材料になる。

 近年の業績は売上高で4億5,000万円から5億円超を安定的に推移しているが、こうした営業スタイルや社員の士気アップが功を奏し、代替わり時の負債はキレイになくなったという。結果として会社の健康度をはかる指標である自己資本比率が向上、企業として実に理想的な状態にある。経営の舵取りをする直塚氏にとっては、これからの一手をどう打っていくか。これも考えやすい。クリエイティブの世界で培った柔軟な発想力で何を見せてくれるのか。実に楽しみなところだ。

顧客の要望をカタチにするため知恵を出し合う
顧客の要望をカタチにするため知恵を出し合う

社員を満足させる福利厚生

 労働環境、職場環境の向上が実現でき社員が気持ちよく働ければ、会社の業績は嫌でも上がる。そう考えているから、ここにもっと力を注ぎ込みたいという直塚氏。

 現在、社員数は13名。まさに少数精鋭の技術者集団といえるが、新しい人材も積極的に採用するなど人材獲得に意欲的だ。当然、頑張る社員のためにさまざまな福利厚生や好待遇を用意し、環境の充実を図っているわけだが、たとえば仕事で欠かせない国家資格の取得については、試験費用から講習会受講費用まですべて面倒を見るという。さらに合格者については資格手当のほかに報奨金を贈るというから、社員の資格取得に向けた意欲もますます高まる。

 ほかにも社員たちが喜ぶ福利厚生はあるのかと尋ねてみると、「書いて欲しくない。他社に真似されてしまう」という答えが返ってきた。もちろん取材時はそうした話題がいろいろと出てきたわけだが、直塚氏との約束通り、ここでは紹介しないことにしたい。気になったらぜひ、直接会ってたしかめてみるといい。直塚氏が考える、同社ならではの労働環境のデザイン。ほかの電気設備工事施工業者ではあり得ないもの、社員の意欲をそそられる話が次々と出てくるだろう。

資格を取ることで仕事の範囲も大きく拡がる
資格を取ることで仕事の範囲も大きく拡がる

代 表:直塚 知和
所在地:福岡市南区寺塚1-4-3
設 立:1983年9月
資本金:1,000万円
TEL:092-511-7773
URL:http://www.denkyusha.co.jp

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