2024年12月23日( 月 )

ラグビーW杯、日本代表激闘制する─日本代表vsスコットランド代表─

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 ラグビーワールドカップ2019日本大会(W杯)で、日本代表は10月13日に横浜国際競技場でスコットランド代表と対戦し、28-21で勝利した。この結果、日本代表は悲願のW杯ベスト8進出を決めた。1987年第1回大会から9回連続出場の日本代表にとって初めてのトーナメント進出である。

 「激闘・死闘・全力を尽くす」─両チームのベスト8を賭けた戦いは壮絶であり、試合後は精魂果てるほどの試合だったので、国民は固唾をのみながら観戦したことだろう。今回のW杯プール戦のラストマッチに相応しい歴史に残る一戦であることは明確である。

 日本代表は筆者の予想とは真逆の戦法で、スコットランドを徐々に追い詰めていった。筆者はSO(10番)田村優の多種で自在にコントロールできるキックで手堅く陣地を進めることを優先させると予想した。しかし、それとは違い、積極的に長短のパスで前進する、ポゼッション(ボール支配率)優先の戦法で挑んだ。結果、その積極的な戦法が功を奏して4トライを奪い、ボーナスポイントを獲得しての勝利となった。

 日本代表は、前半のボールポゼッションが74%とスコットランド代表を圧倒した。世界的な名手として名高いSH(9番)グレッグ・レイドロー、SOフィン・ラッセル、FB(15番)スチュアート・ホッグという中核に「仕事」をさせなかった。開始早々の前半6分に、タックルミスからフィン・ラッセルのトライで先制されたものの、日本代表は冷静かつ大胆にボールを縦横無尽に動かした。その結果、前半だけで3トライを奪い、完全に試合の主導権を握っていた。

 後半、スコットランド代表の逆襲により、1トライ1ゴール差まで詰められるが、終始ディフェンスは力強く、そしてスキルフルなタックルによりスコットランド代表のアタックを寸断した。

 マン オブ ザ・マッチには、スピードスターWTB(11番)福岡堅樹が選ばれたが、LOジェームス・ムーアとトンプソン ルークのディフェンス力の高さが全試合を通して日本代表のアタックとディフェンスを支えている。

 LO(ロック)のポジションは、スクラム・ラインアウトの支柱的な存在で、とくにピンチで頼りにされることが多い。そして空中線でのボール争奪、ブレイクダウンなど常にあらゆる局面でのプレイに参加しているLOの存在が勝敗を分ける。

 ジェームスとトンプソンは、どの代表のLOよりもハードワークをして献身的なパフォーマンスを披露している。それは、タックル成功率93%、95%と高い水準を示していることからもわかる。

 前述の通り、LOは誰よりも強靭でチームの中核的な存在で、タックルだけではなく、アタックの局面でもチャンスメークを求められる “鉄人”である。
その両名が、ディフェンス・アタックとも目立たないながらも、得点への重要なサポート役を担っていることを忘れてはならない。

 ほか、CTB(12番)中村亮土は正確無比なハンドリング&パスワークによるチャンスメーカーとなり、やや修正は必要なものの、ここ1番の強力なタックルも特筆すべき点がある。トライゲッターと同様、地味ではあるが、ぜひともこの3名のパフォーマンスにも注目していただきたい。

 日本代表はプールAの1位として10月20日、東京スタジアムにて、南アフリカ代表と対戦する。いうまでもなくスコットランド代表戦以上の激戦が予想される。

 南アフリカ代表は、世界有数の強靭なディフェンスを誇り、ディフェンスからチャンスをつくって逆襲する戦法がスタンダードだ。

 スコットランド代表に苦しめられた“チョークタックル”=相手選手を倒さずに上体を抱え込みボールキャリアーの重心をコントロールし、ターンオーバーかパイルアップ(ボールの動きを止める)を狙ってくる。これを阻止するためには、日本代表のボールキャリアーは、より低い姿勢でのランとコンタクトポジションが必要だ。さらには、しなやかなボディコントロールによってボール支配をキープすることである。

 積極的にオフロードを駆使することもオプションの1つである。ディフェンスは試合ごとに進化している。南アフリカ戦では、やはり90%以上の成功率が求められる。とくに自陣10mから22m付近でのタックルエラーは危険である。いずれにせよ、1トライ差の攻防が雌雄を決すると予想される。

 皆で声援を送りながら日本ラグビーの新たな歴史を、見届けよう。

【河原 清明】

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