日本の近未来を左右するアジアの新潮流:その源流はインドにあり!?(前編)
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、2019年11月8日付の記事を紹介する。
中国を人口の多さでも経済発展の速度でも追い抜く勢いを見せているのがインドだ。何しろ、人口は数年以内に17億に達するというし、経済成長率も著しい。2019年には若干の落ち込みが予想されるが、近年は7%台を記録してきた。
そんな未来の超大国インドに乗り込み、2018年9月、安倍首相は日本の新幹線方式を導入した高速鉄道の起工式に臨んだ。総事業費は実に2兆円で、内80%以上を日本が負担する。日本からの円借款のなせる業といえよう。
その時期、67歳の誕生日を迎えたモディ首相は大喜び。安倍首相曰く「モディ首相の経済政策は新幹線と同じだ。高速で、安全で、信頼できる。多くのインド人が喜んでいる」。外交辞令のようにも聞こえるが、安倍首相は本気のようだった。とはいえ、そうした評価は妥当だろうか。
ムンバイとアーメダバード間は現在8時間かかっているが、新幹線が開通すれば3時間でつながる。しかし、新幹線に乗れるのは裕福なビジネスマンに限られる。安倍首相はご存じないようだが、そもそもインドの鉄道は事故の多さで有名だ。2010年から今日だけでも70件を超える脱線事故が起き、多数の死傷者が出ている。とても安全とは言い難い。多くのインド人にとっては「夢の新幹線」より、「事故のない鉄道」が必要とされる社会インフラのはずだ。確かにインドは鉄道の総延長では世界第4位に位置する鉄道大国。しかし、事故の多さでは世界1位との汚名に甘んじている。
安倍首相の訪印直前にも重大事故が頻発し、鉄道大臣は更迭されたばかりであった。本来、鉄道の安全運行に欠かせない人材育成や路線整備に資金を投入すべきであろう。現在使われている5万5000台の車両は老朽化している上、トイレなど衛生面の問題も深刻化。「こうした問題を解決するのが先」との声が大きい。筆者も何度かインド国内で鉄道に乗ったが、二等車や三等車には人と動物が混在し、お世辞にも衛生的とはいえない環境であった。最も驚いたのは駅のホームが生きたニワトリや豚で溢れ、列車内のトイレをこうした動物たちが占拠していたことである。客車なのか貨物車なのかわからない状況に戸惑ったものだ。
にもかかわらず、新幹線に拘るのはモディ首相が選挙公約として掲げてきたからだ。なぜならムンバイは2014年まで州知事を務めたモディ首相の地盤。いわば、地元への利益誘導ともいえるわけで、日本の肝いりの新幹線導入ではあるが、国内では反発も巻き起こっている。安倍首相はどこまでそうしたインドの国内事情を理解しているのだろうか。計画中の新幹線はトンネルの距離が21kmで、その内7kmは海面下という。難工事に加えて、テロの頻発する地域を走行する新幹線は「金持ち列車」としてターゲットになりやすい。2023年の開業を目指すというが、リスクの大きなプロジェクトである。しかも、インドは日本の意に反して、2019年11月5日、東アジア地域包括経済連携(RCEP)交渉から離脱すると宣言。安倍首相にとっては「寝耳に水」の事態である。見通しの甘さを指摘されても仕方ないだろう。
※続きは11月8日のメルマガ版「日本の近未来を左右するアジアの新潮流:その源流はインドにあり!?(前編)」で。
著者:浜田和幸
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