宇宙ビジネスを可能にする切り札:宇宙エレベーター(後編)
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、2019年12月13日付の記事を紹介する。
中国は現代版シルクロードと呼ばれる「一帯一路構想」を推進している。アジアとヨーロッパ、そしてアフリカや南米にまで道路、鉄道、港湾などインフラ整備を進め、新たな巨大な経済圏を生み出そうというものだ。最近では、サイバー空間から宇宙にまで拡大する意図を鮮明にしている、まさに「宇宙シルクロード」プロジェクトである。
この構想を実現する上で、重要な役割を期待されているのが「宇宙エレベーター」に他ならない。材料となるカーボンナノチューブの開発が進んだため、宇宙エレベーターの実現は今や秒読み段階に入ったといっても過言ではない。日本は2050年を目標に宇宙エレベーター建設計画を進めている。
JAXAのH-2AロケットやNASAのスペースシャトルと比べ、宇宙エレベーターであれば物資輸送コストは大幅に軽減される。しかも、化学燃料を使い、大気圏脱出に大きな推力とエネルギーを必要とするロケットと違い、宇宙エレベーターの場合は宇宙空間では太陽光や太陽プラズマを電力に変換して推力にできるためエネルギー効率が格段に高まるメリットがある。
その上、オゾン層の破壊もありえないし、宇宙ゴミも発生しない。大林組は火星への入り口となる地上から5万7000kmを超え、木星への入り口となる9万6000kmに達する宇宙エレベーターの構想を進めている。日本政府の支援の下、完成目標は2050年である。
しかし、後発の中国は「2045年に完成させる」と宣言。2049年に共産党国家の建国100周年を迎える中国の大胆な試みである。日本のネックは1基10兆円から20兆円と見られる高額な建設費である。一方の中国は100兆円規模の資金を投入する意向を示しており、先行していた日本は厳しい開発競争に直面している。平和な宇宙開発という観点からいえば、日中の協力が欠かせないと思われる。
2020年3月末から国賓として来日する予定の習近平国家主席であるが、安倍首相との間で宇宙の共同開発にどのような協議を展開するのか、大いに期待と注目が寄せられている。半世紀前、こうした宇宙開発は旧ソ連が先頭を走っていた。その後、1970年代にはアメリカが取って代わった。筆者の友人でもあった未来学者アーサー・クラーク氏が宇宙エレベーターを最初に提唱した人物である。アメリカの航空宇宙産業界はNASAの支援を受け、その実現に取り組んだ。しかし、財政難のため、2010年についに計画を断念してしまった。
その後、アメリカに代わって、宇宙エレベーター開発に参入してきたのが中国である。2019年6月、スペインのマドリードで開催された「宇宙エレベーター開発研究国際会議」に大デレゲーションを送り込み、主要な研究発表を行ったのは中国であった。欧米や日本と比べ、宇宙開発にかける中国の本気度と凄みを感じさせられる。「宇宙シルクロード」は単なるスローガンや夢物語ではなさそうだ。
※続きは12月13日のメルマガ版「宇宙ビジネスを可能にする切り札:宇宙エレベーター(後編)」で。
著者:浜田和幸
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