中国経済新聞に学ぶ~顔認証は利便、脆弱性に心配
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これまで「出かけるのにサイフは要らない、顔があれば大丈夫」という言葉は、「世の中の人はみんな兄弟のように仲良し」で「顔が利く」市場のことを指していた。しかし今では、兄弟に顔を利かせる必要はなくなり、誰でも顔を装置の前に出せば取引が完了するようになった。便利でスピーディーであること、これが決済技術革新の最終的な目標だ。
決済技術革新の最終的な目標
統計によれば、顔認証システム装置1台の1日の作業量はレジ担当者3人分の働きに相当し、消費者10人が同時に決済を行え、決済にかかる時間は従来モデルの56秒が10秒に短縮される。ここからわかるのは、顔認証による決済は利用者の時間を節約するだけでなく、ピーク時のレジ待ちの行列も効果的に解消するということだ。また特別な事情を抱えた人々、たとえば高齢者、聴覚障害者、発話障害者、視覚障害者などにとって、顔認証決済は最も直接的な便利さをもたらし、金融包摂の実行をよりよく後押ししてくれる。
企業側からみると、顔認証装置は単なる取引決済ツールではなく、人件費と経営コストを抑えることができるものでもある。イオンやウォルマー卜などの大型スーパーはどこも、人によるレジとセルフレジと2種類のレジを設置する。消費者がレジの機械の前で商品の照合と支払いを済ませる情景は、今や珍しくない。
イオンのセルフレジで支払いをしていた王さんは、「セルフレジが始まったばかりの頃はみんな使う勇気が出なくて、用心して使おうとせず、人のいるレジに並んでいた。セルフレジが空いていても行かなかった。勇気を出して1回使ってみると、すごく便利だということがわかり、すぐに気に入った。今ではセルフレジにも行列ができている」と話した。
決済プラットフォームからみると、技術変革は決済方法の変革も後押しする。2017年には顔認証装置は1台数万元(約数十万円)もしたが、19年8月には約3千元(約4万7,450円)まで値下がりし、技術は急速に普及拡大した。業界関係者の多くが、「2019年は顔認証決済元年」と言い、支付宝(アリペイ)や微信支付(WeChatペイ)が投入した大量の消費補助金は顔認証消費へのランダムな減免額サービスに充てられた。
さらに顔認証決済装置にはバックグランドでの会員紐付け機能がある。消費者が店舗で顔認証決済をすると、すぐにその店の会員として登録され、次回の来店時に対象商品の割引サービスなどが受けられ、消費者の再来店を促し、店舗にとっては来店者フローを増やし顧客のロイヤリティを高めるという大きなメリットがある。これも顔認証決済が好まれる重要な原因の1つだ。
安全性を第一にするべき
調査会社・艾媒諮詢がこのほど発表した「2019年上半期中国モバイル決済産業研究報告」によると、19年上半期には中国のモバイル決済取引規模が166兆1,000億元(約2627兆円)に達し、予想では年間の利用者は7億3,300万人に達するという。
現在、支付宝と微信の顔認証決済装置の設置規模は約10万台で、これと同時に銀聯の雲閃付(クイックパス)も広州、杭州など7都市で続々と顔認証決済を実現させている。
現在、重慶市の大型スーパーには顔認証決済機能を備えたセルフレジゾーンがある。ローソンや郷村基などの店舗でも顔認証決済装置を見かける。一部の区・県では郷・鎮に向かうバスにも顔認証装置が搭載されている……顔認証決済の発展と拡大の流れを押しとどめることは不可能だが、装置の設置数をみると、全体として設置効果が十分に出ているとは言えない。消費者は顔認証決済に対し、なお様子見の態度を取り、懸念する声も多く聞こえてくる。
関連技術の専門家の説明では、「指紋認証や虹彩認証に比べて、人間の顔にはプライバシーレベルが低いという生物的特徴があり、携帯電話という仲介手段がなくなったため、顔情報を『コピー』したり利用したりすることがより簡単になり、それにつれて、顔認証決済を利用する場合のリスクも高くなった」という。
中国人民銀行(中央銀行)科技司の李偉司長は、「顔認証技術は金融サービスの利便性と包摂性を高めたが、同時にプライバシー漏洩、アルゴリズムの脆弱性といった一連のリスクもそこには存在する。『データを手に入れた者が天下を取る』時代にあって、常に外部にさらされている顔だけで行える決済取引には、非常に大きなリスクが潜んでいるといえる」との見方を示した。
中国人民大学法学院の劉俊海教授は、「顔認証決済について、監督管理部門は早急に対応する法律・法規を制定し、監督管理を強化する必要がある。また企業も自らを律し、消費者の情報のセキュリティを保障し、顔認証決済の隠れたセキュリティリスクを軽減し、消費者に『安心感』を与えるべきだ」と述べた。
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