プロバイオとプレバイオの融合 腸内細菌研究で新機能発見に期待(後)
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市場化なるかシンバイオ製品
そして、ここにきて新しく「シンバイオティクス(synbiotics)」という言葉が使われ出した。簡単にいえばプロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせたもので、双方の機能がより効果的に宿主の健康に有利に働くことを目指すというものだ。
医療の臨床現場においては、シンバイオティクス療法として病態者や術後における感染防御、炎症抑制などにおいてすでに効果を示していた。しかし、これらはあくまでも医師の管理下で行われるもので、今まで、このシンバイオティクスという概念を一般市場に落とし込むといった考えがあまりなかった。
(株)ヤクルト本社では、すでに2017年から「シンバイオティクス ヤクルトW」を発売していたが、昨年10月7日からハードタイプヨーグルト「シンバイオティクスヨーグルトW」を新発売した。「生きて腸内に到達する「乳酸菌シロタ株」と腸内の乳酸菌を増やす「ガラクトオリゴ糖」を一緒に摂ることができる」というのがその宣伝文句だ。そして、商品正面には「シンバイオティクス」の大きな文字が躍る。
一方、森永乳業(株)は、『ビフィズス菌BB536』を配合した「ビヒダス ヨーグルト」シリーズから、「ビヒダス シンバイオティクスプロテインヨーグルト ドリンクタイプ」「ビヒダス シンバイオティクスプロテインヨーグルト」を2019年9月24日に発売した。
「『ビフィズス菌BB536』に加えて、おなかのなかでビフィズス菌を元気にする『食物繊維イヌリン』、さらには、体に必要な栄養素である『たんぱく質』を配合、ビフィズス菌研究50周年の森永乳業だからこそ提案できる3つの健康素材の組み合わせを、これ1つでまとめて摂取することができます」との宣伝文句だ。いよいよ本格的に「シンバイオティクス」の市場が動き出したかもしれない。
新技術の登場で腸内制菌研究が進化
少し前までの腸内細菌研究は、検体から1つひとつの菌を分離培養して調べるしか方法はなかった。そのため、多くの時間と手間がかかる割にはその研究はなかなか進まなかった。しかし21世紀に入って、オミックス解析という手法が可能になった。
詳細は割愛するが、次世代シーケンサーという機器の登場によって、検体から菌を分離培養しないで、検体丸ごとからDNAを抽出して菌種を同定することが可能になり、それまでほとんどが培養不可能であった腸内細菌の全菌種(細菌叢)が明らかになった。これによって、食品としての機能性研究だけでなく、医療の診断・治療・検査部門までにも革新的な変化をもたらした。
なかでも、「メタボローム解析」という手法は、腸内細菌の研究に長足の進歩を与えた。この解析によって腸内細菌がプレバイオティクスを餌としてつくり出す脂肪酸などの数千種類におよぶ代謝産物の総体を網羅的に解析することが可能となり、それらの代謝産物の機能性も次々と明らかになってきた。
とくに、代謝産物の1つである酢酸やプロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸が多くの有益な機能をもっていることが徐々に明らかになってきている。これらの研究は細菌自体の遺伝子情報を網羅的に解析することができる「マイクロバイオーム解析」などと組み合わせるかたちで、今後さらなる新機能が次々と発見されることは間違いない。
(了)
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