循環取引はIT業界の商慣習なり!~今度は東芝子会社など5社が架空取引(後)
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メディア・リンクス事件が循環取引をあぶり出す
大掛かりな循環取引で、上場しているIT企業がバタバタつぶれたことがあった。
発端は2004年秋に、摘発された元大証ヘラクレス上場のITベンチャー企業、メディア・リンクス(大阪市)の背任・粉飾決算事件である。メディア社は株式上場を計画したが、売上が伸びない。そこで売上が伸びているように見せかけて上場するために、循環取引という「麻薬」に手を染めた。仕切ったのは、伊藤忠テクノの元部長である。
2002年10月、首尾よく上場にこぎつけた。上場したからには、売上を落とすわけにはいかない。当初、メディア社の架空取引の相手は伊藤忠テクノだけだったが、上場を機に架空取引はエスカレート。伊藤忠テクノの誘いで、IT企業約20社が架空取引に加わった。
IXIが循環取引を再開
東証二部上場のシステム開発会社、アイ・エックス・アイ(IXI、大阪市)は、メディア・リンクス事件に、スルー取引で加担していた。
メディア・リンクス事件で、IXIの循環取引は、いったん中止に追い込まれた。だが、IXIは2005年春に循環取引を再開した。東証二部上場を維持するために、売上高を上げる必要に迫られたからだ。メディア社が上場を維持するために、循環取引に手を出した動機とまるっきり同じだ。
IXIの循環取引は、東証一部上場のネットワンシステムズの元部長がシナリオを画いた。
IXIは循環取引で売上高の8割を水増ししていたことが発覚。07年1月、民事再生法を申し立て破綻した。
IXIを買収して子会社にしていた東証マザーズ上場第1陣のインターネット総合研究所は、IXIの粉飾数字がかたまらないため、決算ができず上場廃止に追い込まれた。
あらゆる架空取引の手法を使ったニイウスコー
2008年4月、東証二部上場のニイウスコーが、東京地裁に民事再生法を申請した。負債総額は持株会社ニイウスコーが408億円、事業子会社のニイウスが732億円にのぼった。
破綻の原因は、循環取引だった。2003年6月期から5期連続で循環取引を行い、売上高682億円、純利益277億円を水増ししていた。
ニイウスコーは架空取引のオンパレードだった。スルー取引、セール&リースバック取引、バーター取引(現金を使うことなく、商品やサービスを行うこと。「物々交換」という)、循環取引をかませて売上を水増ししていた。
同社は日本IBMと野村総合研究所の合弁会社としてスタートし、経営陣は日本IBM出身者が占めていた。
主導したネットワンの決算発表が注目
その後も、循環取引は間欠温泉さながらに噴き出てきた。
2014年に経営破綻したゲーム制作会社インデックスの粉飾決算事件では、約80社の会社を使って循環取引を行っていた。利用した会社には、実体のないペーパーカンパニーも含まれていた。
2015年には伊藤忠商事の子会社伊藤忠ホームファッションの営業担当の社員が取引先と共謀して架空の在庫を計上し、循環取引を行っていた。
今回、ネットワンシステムズが主導した5社の循環取引が発覚した。架空取引の総額は400億円を超えるとみられている。モノを介さないIT取引の特性を突いた。
日鉄ソリューションズや東芝は決算発表で架空取引の経緯を説明する。
循環取引を差配していたネットワンは1月30日に予定していた19年4~12月決算の発表を2月13日に延期した。決算発表時に、一連の循環取引の全容が明らかになる。決算内容も修正する。架空取引の主役はどんな発表をするのだろうか。生々しい報告を期待したい。
(了)
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