【ベトナム視察記(1)】ベトナムの「光と影」(後)
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金持ちはお役人様
ハイさんが下記のように指摘する。「現在、会社に勤めれば日本円にして30,000円が平均収入である。市民はこれでは生活ができないので、いろいろと自営の仕事をこなしている。そのなかで一番の金持ちは役人」とツバを吐き捨てるように苦々しく語る。「役人たちは賄賂で収入を増やしている」そうだ。
実例として車中から、たびたび目撃した交通違反の警察の取り締まりが挙げられる。一見、熱心に取り締まりしているように見えるが、実際は収入のために熱心なだけなのである。
違反者を摘発して交通違反の切符を切った際に交渉する。本来の反則切符が10,000円とすると、交渉次第で4,000円の減額となり、代わりに3,000円を賄賂として渡す。この不正(日本の価値基準では)が横行している現実がある。いやぁ、本当に滑稽というか、深刻というか、ベトナム社会の闇の一面を知った。交通警察官にしてみれば、生活の糧であるから必死である。
確かに10%は金持ち
ハイ氏の話を続けよう。確かに給料は上がっているのだが、「給料が上がる割合より物価が高くなっている。だから、実際の生活は苦しい」と強調する(物価が10%増で7%の収入増であれば、実質3%減となる)。だから生活維持のために誰もがいくつもの副業をしている。
「若い連中はネットを使って物品販売の収入を得ている」そうだ。同氏の不満の端々から得られた結論は「金持ち層が人口の10%、20%が中間層、残り70%の市民は必死で働かないと生活ができない」ということだ。これが現在のベトナムの「階層区分」と解釈して良い。
一般的にベトナムは経済発展すると有望視されている。だが、市民たちの満足できる経済政策をうたないと、いつか市民たちの怒りの声が高まり、爆発するだろう。ただし、万人が満足できる経済政策の実現は本当に難しい
「金持ち10%」の定説で行くと、金持ち階層の子弟の留学先の大半はアメリカ、カナダ。そして、みんな優秀で必死に勉強する。日本に留学する連中は「2、3級品」である。真面目に日本で勉強するのは10%位で、残りの90%はお金を稼ぐ目的で留学する。ベトナムより日本でアルバイトをした方がお金になるからである。
「べトナムが親日だ」と単純に喜ぶわけにはいかない。「研修生の待遇を筆頭に本当にベトナムのことを考え、貢献していかなければならない」と今回の5日間の滞在で痛感した。水面下の事実を直視した思考が必要である。
激変4項目
ハノイにある日本政府の経済支援団体でレクチャーを受けた。そのなかで痛感したのはベトナムの社会、経済、政治が短期間で激変していくということである。
(1)現在、中国からベトナムへの工場移転が、ひっきりなしに行われている。今回の「コロナウイルス蔓延パニック」で、移転の動きが、さらに加速し、一瞬にして世界の製造拠点へと変貌するだろう。現時点でも対アメリカ貿易の黒字幅に関してベトナムが第5位にランクインしていることを知っている人は少ないだろう。
(2)南シナ海で、中国が軍事制圧の動きを露わにしだした。こうなると中国とベトナムの二国間で、軍事的対立の構図が鮮明となるだろう。そうなると、日本とベトナム間で信頼関係、経済的・人材的・安保の面の結束が急速に強まる。ベトナムは歴史的に中国に繰り返し侵略されてきた経験があることを忘れてはならない。
(3)日本への技能研修生の数が増えた。それにともない、ベトナム研修生が犯罪に手を染めることも増え、日本政府および引き受け関係団体は丁寧な処置を行うことが緊急の課題となっている。技能研修生の問題で、親日関係を壊す愚の骨頂のような対応をするわけにはいかない。
(4)2030年にはベトナムも人口減になるという事実を把握したうえでの戦略構築が必要である。人口減は少子化と高齢者の死亡者数増加が原因と考えられる。「経済の発展にともなって家族関係が壊れていく」「高齢化社会の急激な到来」「日本への技能研修生の派遣が不可能になる」これらへの覚悟が求められるということだ。
(了)
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