【コロナに負けない(1)】苦境に立たされたイベント主催者の強き想い~スポーツひのまるキッズ
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新型コロナウイルスの影響がさまざまな業界におよんでいるが、なかでもイベント業界に対する影響は計り知れない。ミュージックライブ、マラソン大会、スポーツイベント、競馬など政府の突然すぎる対応と「安全性」という「矛」をあてられ、苦渋の決断に至っている。
それでも予定を変更せずに実施したイベントがあった。賛否両論があるといっても、やはり世間の目は冷ややかな反応が多いようにみえる。
「スポーツで子どもたちの健康で健全な心身を育成し、明るい家族関係と明るい社会をつくる」ことを目的とし、2008年に設立以降、柔道やテニスなど数々のスポーツイベントを催してきた(一社)スポーツひのまるキッズ協会。同協会は、今回のコロナ騒動の影響と危険性を考慮し、2月23日に丸善インテックアリーナ大阪(大阪府大阪市)で開催を予定していた『第10回スポーツひのまるキッズ近畿小学生柔道大会』を急遽、中止した。取材予定だった記者に中止の連絡がきたのは、大会当日4日前だった。
そして、4月12日に予定していた『第12回スポーツひのまるキッズ関東小学生柔道大会』(神奈川県横須賀市)も延期を決定した。
仕方がないとはいえ、イベントの主催を生業とする団体にとっては、イベントの中止・延期は運営において死活問題だ。緊急事態と銘打っているが、日本政府の対応は明らかにその他諸外国に比べ遅れている。自粛を要請するも、当然、主催者側への損害負担を保証する制度はない。仮にこれから先にできたとしても、補助金が出るのは当分先だろう。すべての団体・主催者側も大量の資金を擁しているわけではない。今回の影響で、資金繰りがうまく回らず、倒産したり破産する団体も出てくることが予想される。
同協会は設立から12年、困難な道のりを歩み続けてきた。イベントを運営するためにはスポンサーの協賛が必要不可欠だが、予想以上に協賛が集まらない状況が続いていた。代表を務める永瀬義規氏は、当時をこう振り返る。「赤字続きで、借金して家も売りました。借りた金は、すべて社員の給与にあて、自分は街の友だちの店で炭酸水だけもらって、ずっと企画書を書いていました」。それでもあきらめずに邁進し続けた結果、徐々に活動が実を結び、運営が軌道にのった矢先のコロナ騒動だった。
永瀬氏はそれでも「明けぬ夜はない」と自らを奮い立たせている。きっかけは自身のSNSに写し出された8年前のイベント時の写真。写真には当時のメンバーと同氏が映っている。今ここで積み上げていたものを崩してしまえば、「創業からここまで必死に仲間たちが築いてくれた礎、そして、今のスタッフの努力が水の泡となる。それだけは、絶対に嫌だ」。
そして、ひのまるキッズの大会を開催できた日の「親子の笑顔」を見るまでは絶対にやり抜くことを誓う。多くのイベント主催者が突然の出来事に嘆きの声をあげているなか、すでに永瀬氏に聞こえているのは、親子が満面の笑みであげる歓喜の声だろう。
【麓 由哉】
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