2024年09月18日( 水 )

給料ファクタリングは「貸金業」に該当~各業界の反応は?(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 金融庁は3月5日、給料ファクタリング業が貸金業法第2条第1項で定める「貸金業」にあたるかどうかについて、「該当する」との見解を示した。2月28日に照会のあった、一般的な法令解釈に係る書面照会に応じたもので、3月6日に金融庁HPにて公表されている。

金融庁「ビジネススキームが貸金業に該当」

 金融庁は給料ファクタリングが貸金業に該当する根拠として、「個人(労働者)が会社(使用者)に対して有する給料(賃金債権)をファクタリング業者が買い取って金銭を交付し、個人に対して回収を行うものである」とするビジネススキームを例に挙げた。

 このスキームでは、業者が労働者に対し支払を求めることになり、「スキーム上、(ファクタリング業者から労働者へ)金銭の交付だけでなく、労働者からの資金の回収を含めた仕組みが構築されていると判断できる。これは金銭の交付と返還の約束が行われている貸付と同様の機能を有しているものと考えられる」ことから、貸金業法第2条第1項(※1)に定められている「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法」にあたると判断した。

※1:貸金業法第2条第1項
この法律において「貸金業」とは、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によってする金銭の交付又は当該方法によってする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に「貸付け」という。)で業として行うものをいう。

 この指針により、今後は無登録で給料ファクタリング業を行っている業者に対する問い合わせや相談が増えることが予想される。仮に現行のビジネススキームが貸金業にあたると判断された場合、業者は貸金業の登録を行うなど、何らかの対応を迫られることになる。

 悪質なケースに至っては、何らかの処分の対象となる可能性が考えられる。金融庁の担当職員は、「問い合わせを受けて当該業者を調べた結果、違法行為が認められれば、その業者に対する警告や指導などの処置を取ることになるだろう」と述べた。

「給与前払いサービス」とは性質異なるが…

 なお、金融庁が2018年12月20日に公表している文書には、給料の前払いサービスについて、「貸金業法上の『貸付け』行為に該当せず、貸金業に該当しない」という見解が示されている(※2)。前述の金融庁職員によると、その違法性を問われる事例は、今のところ報告されていないという。

※2:ただし、当該事業者の行為が、従業員又は導入企業に対して、導入企業の支払い能力を補完するための資金の立替えとなっている、又は手数料については導入企業の信用力によらず一定ではないなど、上記前提と相違し、実質的には貸付けを行っていると認められる場合には、導入企業又は従業員に対する金銭の貸付けに該当し、貸金業法第2条第1項に規定する貸金業に該当する可能性が高いと考えられる(金融庁公表「新事業特例制度・グレーゾーン解消制度について」のうち、「4.グレーゾーン解消制度に基づく回答」より引用)

 しかし一部報道で、「給与前払い業者は貸金業にあたる」との誤った内容が発信されたことにともない、正規の業者に思わぬ余波がおよんでいる。「前払いできるくん」「Payme(ペイミー)」といった給料前払いサービスを運営する事業者からは、「当社サービスは一部報道の給与ファクタリングとは性質が異なり、貸金業に該当しない」「『給料の前払いが貸金業に該当する』という旨の言及が誤解を与えかねない」などといった声が聞かれた。

 日本ファクタリング業協会の担当職員は、「金融庁の発表以来、当協会には問い合わせが殺到している。多い時で1日当たり30件近くにも上っている」と話した。しかし、具体的な状況については、「ご覧の状況であり、対応する職員の数が足りない。今は取材を引き受ける状況にない」として、具体的な回答は聞けなかった。

(つづく)
【長谷川 大輔】

(後)

関連記事