2024年11月23日( 土 )

シリーズ「ホテル淘汰」(2)~開業見送り、客室稼働率10%、コロナに翻弄される福岡市のホテル

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 九州一の歓楽街といえば?という質問に「中洲」と答える人は多いと思う。それは、日本人に限った話ではない。2019年3月に福岡市が発表した観光統計によれば、福岡市内宿泊者の九州における訪問・滞在の割合は福岡市が39.8%、次いで大分県の18.0%、福岡市を除く福岡県が13.5%、熊本県が9.7%と続く。「訪日外国人などの動向」では九州全体に占める福岡市の割合が60.5%、福岡県に占める福岡市の割合は94.4%と福岡市がとびぬけたポテンシャルを有していることを内外に示す結果となった。

 また、福岡市におけるホテル・旅館の客室数は18年度で2万8,329室(前年より2,807室増加)、さらに19年~20年度の間に計47棟、6,680室の増加を見込んでいた。それを裏付けるかのように、福岡市内にとどまらず、近隣都市でのホテル用地買収は熾烈をきわめ、100室程度のホテルが増加していくこととなった。

 日韓関係の悪化や、新型コロナウイルスの感染拡大がなければ、東京オリンピックなど、経済効果の大きなイベントを開催することにより、その波及効果によって福岡市民の暮らしも上向いたことだろう。

 現在に話を戻す。20年4月7日、7都府県に緊急事態宣言が発出された。もちろん、福岡県も含まれる。そして、17日には緊急事態宣言の対象が全国に拡大された。

 福岡の中洲エリアで、開業しているホテル従業員らに現状について取材したところ、ほとんどのホテルが、3月中旬からキャンセルが相次ぎ、緊急事態宣言発出を受け、客室稼働率は「10%に満たない」と語る。数少ない宿泊者のほとんどは観光客ではなく、どうしても泊まらなければならないビジネス利用者だという。

 今月24日に開業予定だった「三井ガーデンホテル福岡中洲」(福岡市博多区中洲5丁目)は、開業を見合わせている。同ホテルは、当面の間、予約受付や営業を見合わせる予定とのことだ。一方、臨時休業に踏み切ったホテルもある。「ホテル博多中洲INN」(福岡市博多区中洲中島町4丁目)だ。

 開業を見送るホテル、客室稼働率10%に満たないなかで何とかサービスの質を落とさぬよう営業を続けるホテル、臨時休業を決断したホテル。当事者たちは「この難局は外的要因が大きいため、努力は限定的」と口をそろえる。料金の値下げや、特典を付けることなどで集客すること自体、世の動きに反する行為と認識している証であり、良識ある考えと言えよう。

 そんな中、福岡市は4月1日より宿泊税の徴収を行っている。この税をめぐって県と市が「喧々諤々(けんけんがくがく)」の議論を重ねていたころが懐かしい…。

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