2024年12月22日( 日 )

アメリカが敵視する中国、北朝鮮、イランが進めるデジタル通貨戦略(中編)

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、2020年5月8日付の記事を紹介する。


 思い起こせば、2019年夏、アメリカのフェイスブック社が「リブラ」と銘打ったデジタル通貨の発行計画を発表した。フェイスブックといえば、世界中の30億人近くが使っているわけで、それだけ多くの人々の間でお金のやり取りを行う際に、巨大なデータベースに他ならないブロックチェーン技術を活用してデジタル化を図ろうという構想であった。

 ところが、アメリカはじめ各国の中央銀行や議会からは猛反対の嵐が巻き起こった。「フェイスブックは個人情報の管理で問題を起こしている。信用できない。第一、民間の会社が通貨を発行するのはおかしい。裏付けがない通貨などもっての外。通貨を発行できるのは中央銀行だけだ」といった反対の声が大きく、「リブラ」は足踏み状態に陥ってしまった。

 しかし、リブラ騒動の直後、独自のデジタル通貨発行に名乗りを上げた国が現れた。その先陣を切ったのがイランであった。アメリカによる経済制裁を受け、ドルの使えないイランにとっては新たな「希望の星」と映ったに違いない。イランについで動いたのが中国と北朝鮮であった。いずれもアメリカから敵視されている国々である。

 この動きにさまざまな思惑が隠されていることは明らかだ。一言でいえば、「今の世界には多くの対立が起きている。アメリカの都合で一方的に引き起こされた対立もある。それにもかかわらず、世界貿易の決済はすべてドルというのはおかしい」ということだろう。

 いうまでもなく、中国が貿易の最大の相手国であるという国は、アメリカが最大の貿易相手国という国の数よりはるかに多くなっている。中国は世界の大半の国と膨大な量の貿易を行っているが、その決済は基本的にドルである。

 このようなドル基軸体制の下では、世界中の銀行間の決済業務は国際銀行間通信協会(SWIFT)やコルレスポンディングバンク(コルレス銀行)を通じて行われることになっている。ということは、アメリカの一存でイランでも北朝鮮でも簡単に干上がらせることが可能になる。なぜなら、狙った相手国の政府や企業のドル口座を停止させ、その国に対するドル決済ができないようにSWIFTやコルレス銀行を動かすことが簡単にできるからである。

 言い換えれば、アメリカにとってはドルという存在は単なる通貨以上の意味をもっているわけだ。強力な安全保障上の武器にも早変わりするのである。逆の立場からいえば、イラン、中国、北朝鮮にすれば、ドルによって自分たちの首根っこを押さえつけられているとの思いが根深いと思われる。アメリカと対立する国々が自前の通貨をつくり、世界に通用できるようにしたいと思うのも当然であろう。

※続きは5月8日のメルマガ版「アメリカが敵視する中国、北朝鮮、イランが進めるデジタル通貨戦略(中編)」で。


著者:浜田和幸
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