コロナ危機の裏で深刻化する食糧問題と加熱する種子争奪戦争(後編)
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、2020年6月12日付の記事を紹介する。
オバマ前大統領もトランプ現大統領も米軍をアフガニスタンやイラクから撤退させるとの公約を掲げてきた。しかし、国防総省では米軍の任務を農業支援にすり替えることで、こうした公約を骨抜きにする工作を実行しているのである。非軍事的な目的を遂行するとのカモフラージュによって米軍の長期的な駐留を可能にしようというわけだ。トランプ大統領は海外に駐留する米軍を撤退させたり、在外米軍基地を縮小させたりして撤退を標ぼうしているが、実際には新たな利権を確保する方向で各国に圧力をかけているに過ぎない。
これこそ米軍の新たな海外戦略のソフトパワー化といえよう。アメリカ政府は外交官やUSAIDの援助専門家を海外に多数派遣しているが、そうした人員にかかる費用より30倍以上もの資金を軍事目的に費やしている。しかも巧妙なカモフラージュにより、国防総省自体がアメリカの海外援助の20%以上をコントロールするまでになっている。すでにUSAIDのなかには軍事調整部門ができている。その主たる目的は国防総省との意見調整である。
要はアメリカの軍事戦略に食糧農業政策が完全に飲み込まれているわけである。そのなかでとくに重要な役割を担っているのがアメリカのGM種子というわけだ。遅かれ早かれこうしたアメリカの食糧軍事一体化戦略が広がれば、世界の穀物市場はアメリカの思うように牛耳られることになりかねない。
トランプ大統領が進めるソフトパワー戦略の動向には、日本としても注目する必要があるだろう。なぜなら、こうしたアメリカ製GM種子はイラク、アフガニスタンにとどまらず世界中に売り込まれているからで、日本もその例外ではないからだ。すでに長年にわたり、日本はアメリカ製の種子に限らず農薬や化学肥料を大量に輸入している。
こうしたアメリカの官民一体した種子戦争に対して反旗を翻そうとしているのが中国である。実は、トランプ大統領を悩ます新たな種が中国によって蒔かれたのである。それこそ「種子戦争の種」に他ならなかった。何かといえば、中国の国営企業である中国化工集団(ケムチャイナ)がアメリカのモンサントと並ぶ世界最大の種子メーカーであるスイスのシンジェンタの買収を発表したことである。この買収劇は中国企業による外国企業をターゲットにしたものとしては過去最大のもので、430億ドルといわれた。
※続きは6月12日のメルマガ版「コロナ危機の裏で深刻化する食糧問題と加熱する種子争奪戦争(後編)」で。
著者:浜田和幸
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