【九州大学】iPS細胞由来の人工肝臓作成に成功〈世界初〉 九州大病院の武石助教ら
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肝不全患者の治療に光明
九州大学病院別府病院(別府市)の武石一樹助教と米国ピッツバーグ大学医学部のソト・グティエレス准教授らの研究グループが、ヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)を分化させた細胞からミニ人工肝臓を作製、移植したラットの体内で肝臓として機能させることに成功した。
iPS細胞に由来する人工肝臓の作製は世界初という。武石助教は「ヒトの肝臓移植に応用できれば、肝臓機能が大幅に低下した肝不全患者の治療に役立てることができる」としている。
武石助教らは、臓器のような環境下でヒトのiPS細胞から肝臓を作製するのに必要な肝細胞、胆管細胞、血管上皮細胞を分化させた。その一方でラットの肝臓から肝細胞を抜き取った足場たんぱく質のみなどが残った「肝臓の鋳型(スキャフォールド)」を作製した。
「肝臓の鋳型」に、ヒトiPS細胞から分化させていた肝細胞、胆管細胞、血管上皮細胞を注入(播種)。さらに肝臓の微細構造に似せるため、ヒト1次肝臓由来の線維芽細胞と間葉系幹細胞を播種し、ミニ人工肝臓を作製した。
ミニ人工肝臓をラットの体内に移植したところ、分泌性タンパク質の1つ「アルブミン」の合成、解毒といった肝機能が確認された。また正常な肝臓と比べると、肝血管系のカバレッジ(網羅率)は75%、胆管は66%のカバレッジだった。
肝臓病患者の根治治療に
肝機能が大幅に低下した肝不全の患者にとって、根治療法は肝移植しかない。しかし国内では脳死ドナー不足は深刻で、肝移植希望者の1万4,000人に対し、実際に移植手術を受けられるのは400人程度にとどまる。また移植手術が成功しても患者は生涯、免疫抑制剤の使用を強いられる。
しかし、患者の皮膚などから作製したiPS細胞由来の人工肝臓の作製技術が進めば、肝臓移植後の免疫抑制剤も要らない肝臓病患者の根治治療になる。
武石助教は「ミニ人工肝臓は、血管などの構造をもっており、移植への応用が期待できる。今後は、大きな動物を使って、肝不全の治療に実際に応用できるようにスケールアップしていく研究を考えている」と話している。
武石助教やソト・グティエレス准教授らの研究グループは19年8月、ヒトiPS 細胞から病気の人工肝臓を作製することに成功。〈長寿遺伝子〉とされるサーチュイン遺伝子の1つ「Sirt-1」が関係していることを突き止めた。「Sirt-1」の働きを抑えた人工肝臓では肝細胞の中に脂肪が蓄積する脂肪肝になるという。
【日本医学ジャーナリスト協会/南里秀之】
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