【株主総会血風録1】大戸屋ホールディングス~買収を仕掛けたコロワイドが戦わずして“戦線放棄”の奇々怪々(1)
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定食チェーン「大戸屋ごはん処」を運営する(株)大戸屋ホールディングス(以下・大戸屋)が6月25日に都内で開いた定時株主総会で、筆頭株主の外食大手(株)コロワイドが提案していた取締役候補の議案が否決された。総会にはコロワイドは出席せず、株主提案の説明もなし。買収を仕掛けたコロワイドは”戦線放棄”したのだ。奇々怪々というほかはない。
コロワイドが担いだ大戸屋創業家の御曹司の賛成率はたったの13.96%
大戸屋は6月26日、関東財務局に臨時報告書を提出し、株主総会で決議した取締役選任の賛成比率を明らかにした。会社提案と株主提案の主な候補の賛成比率は下記の通り。
【会社提案】:第1号議案(取締役11名選任の件)
候補者名
・窪田健一(代表取締役社長)
賛成比率 62.00%
・三森教雄(東京慈恵会医科大学外科講座特任教授。創業者三森久実の実兄)
賛成比率 62.13%【株主提案】:第3号議案(取締役12名選任の件)
候補者名
・蔵人賢樹(コロワイド専務取締役)
賛成比率 15.50%
・澄川浩太(コロワイド取締役)
賛成比率 15.50%
・三森智仁(スリーフォレスト代表取締役。創業者三森久実の長男)
賛成比率 13.96%大戸屋の創業家の御曹司、三森智仁氏は、賛成数7397、反対数3万1165と、賛成数は最少、逆に反対数は12名の候補のなかで最多となった。大戸屋の株主は御曹司の復帰にノーをつきつけたのである。
コロワイドは、創業者の長男・智仁氏を取締役候補に据えることで、「創業家は支持している」とアピールした。だが、これが逆効果。現経営陣と対立してとっくに会社を辞め、父親が遺した持ち株をコロワイドに売り払った張本人が、コロワイドに便乗して取締役に返り咲こうとしていると、反発を買ったのも無理はなかった。智仁氏の評判がこれほど悪いとは、コロワイド側は想定していなかったようだ。
コロワイドの票がカウントされなかった
『デイリー新潮』(2020年6月29日付)が、大戸屋の株主総会を報じた。株主提案の第3号議案(取締役12名選任 )のくだりはこうだ。コロワイドの大失態がわかる。
「議長を務めた大戸屋の窪田健一社長が、コロワイドに対し『提案株主が説明を希望する場合は説明の機会を設けたい』と発言しました。ところが、会場はシーンと静まり返ったまま。コロワイドの野尻(公平)社長は、株主総会には『オレが行く』と周囲に言っていたそうですが、来ていなかったのは意外でしたね。
おそらく野尻社長は、株主に電話でお願いした感触が芳しくなく、負けを察したのかもしれません。わざわざ株主総会に出席して負けて、記者に囲まれるのを嫌ったんじゃないでしょうか。結局、『ご賛同される株主の方拍手をお願いとます』という声に対してシーン・・・。(会社提案の)第1号議案の時も、第2号議案のときにもドッと拍手が鳴り響いたんですけどね」(事情通)
コロワイドの社員の出席者は1人のみだったという。「第3号議案は事前に議決権行使されていました。ただし、当日、コロワイド側から出席者がいれば、その場での意思表明が優先されることになっています。にもかかわらず、コロワイド社員は、説明することも、賛成の意思を表明することもありませんでした。会場には、コロワイド側の申し立てにより、公正中立な立場である総会検査役も控えていましたが、彼らも拍手を確認できなかったそうです。そのため、コロワイドが持つ議決権数は賛成にも反対にも数えられませんでした」(同)
コロワイドの社員は、総会のルールを知らなかったのかもしれない。コロワイドの持ち株比率は19%だが、賛成、反対、棄権にもカウントされず、賛成比率はほかの株主分の15%ほどにとどまった。コロワイドの票を加算しても34%程度で過半数にも届かないが、あんなみっともない負け方にはならなかった。
コロワイドの野尻公平社長は、総会に出席して、株主提案の主旨を説明すべきだった。票読みをして「負けそうだから」と欠席したのであれば、あまりにお粗末すぎる。
(つづく)
【森村 和男】
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