経産省の狙いは、公的資金注入でルノーに対抗
コロナショックで業績が急激に悪化している大企業が続出している。政府、すなわち経済産業省は、企業を救済するための仕組みを設け、政府系金融機関の日本政策投資銀行などの劣後ローンや議決権をもたない優先株を使って資本支援する。その救済企業として名前が挙がっているのが、ANAホールディングス(株)や日産自動車である。経産省は、資本注入することで、ルノーに対抗して、日産を日本企業に戻すことを狙っている。
ANAホールディングスが公的資金投入の第1号か
政府はコロナで苦境に陥った大企業の救済のため、第2次補正予算案に大企業への資本注入策を盛り込んだ。日本政策投資銀行などによる劣後ローンや議決権をもたない優先株を使った資本注入策に、12兆円の予算が配分された。日本政策投資銀行などが12兆円のうちの6兆円で企業の劣後ローンを買い入れ支援し、残り6兆円で直接出資するスキームだ。
劣後ローンと優先株は優先権のある普通株と違い、貸し手や株主が経営に深く関与しないため、企業側は受け入れやすい。株式市場では「公的資金投入の第1号」がどの企業になるのかと関心が集まっているが、最有力候補はANAホールディングス(以下、ANA)だ。ANAは日本航空(株)(JAL)の破綻を機会にして、ライバルに追いつけと国際線を大規模に増強し、航空機および人員を増やすなど拡大路線をとってきた。
ANAは、拡大路線により莫大な投資をしてきたため、経営破綻で債務を大幅に減免されたJALと比べると、負債が5倍超まで膨張していた。その状態で新型コロナウイルスの影響が直撃し、旅客数が大幅に減った。
ANAの片野坂真哉社長は6月の段階では、資本注入策の活用について、「創業以来、純民間企業として自立してきたので、(政府出資は)想定していない」と否定していた。
しかし、国際航空運送協会(IATA)は、世界の航空需要が19年の水準に戻るのは24年という予測を公表したところ、ANAはコロナ禍で国際線の回復が望めないため、従来の見解を撤回した。
ANAの福沢一郎取締役は7月29日の決算発表で「下期以降に政府系金融機関に対して、劣後ローンでの支援要請することを検討していく」という考えを示した。この発表は政府が第2次補正予算に盛り込んだ、劣後ローンによる資本注入策を念頭においたもので、公的資金注入の第1号はANAで決まりということだ。
(つづく)
【森村 和男】