2024年12月22日( 日 )

ストラテジーブレティン(262号)菅氏首相指名、解散総選挙・自民圧勝から大相場が始まる予感

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 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。今回は2020年9月15日付の記事を紹介。


真の改革者、菅氏登場の意義

 9月14日に菅官房長官が自民党総裁の後継に指名され、16日に開催される臨時国会で次期首相に任命される。菅氏は、安倍政権の継承をうたっている。良きアベノミクスの継承者であることは確かであるが、その徹底した改革姿勢は、世襲議員であり派閥に育まれた安倍氏とは大きく異なる。

 菅氏は、アベノミクの3本の矢、金融緩和、財政出動はそのまま踏襲するだろう。それと同時に、第3の矢の「改革促進」に大きく踏み込んでいくことだろう。改革促進こそ、国民とグローバル投資家が強く求めるアジェンダであり、改革を加速するという選挙公約を掲げて、近日中に解散・総選挙を打ち出すだろう。世界の投資家は因習と既得権益に塗りつぶされていると感じていた自民党のなかに、これほどのリーダーが存在していることに驚愕するかもしれない。

 NHKは、共和党のブッシュ政権でアジア政策を統括していたホワイトハウスの元高官でCSIS(戦略国際問題研究所)のマイケル・グリーン氏が、自民党の菅新総裁について「非常に知性を重んじ、新しい知識を吸収することに貪欲な政治家だ。自分が行う政治判断のために必要な知識を常に求めており、これほどに厳格で思慮深い日本の政治家を見たことがない」と述べたと伝えている。

 このことは、日本をほとんど眼中に置いていなかった海外投資家の日本株買いを加速させ、株式市場の風景を一変させるだろう。

小泉郵政改革相場、アベノミクス相場に匹敵する株価上昇が期待される

 2000年以降の大きな上昇相場は、経済改革を掲げた政権が登場し、選挙に大勝したことがきっかけになってきた。05年9月の郵政解散、総選挙は、郵政の民営化が改革の本丸であると主張した小泉首相が、(自民党であっても)反対する議員に刺客を送り込み、選挙で大勝した事件であり、株価は投票日から7か月後の高値まで38%上昇した。また、12年12月のアベノミクス時も、総選挙が大相場のスタートになった。日経平均は、投票日から1年後の高値まで67%の上昇となった。いずれもその大相場をけん引したのは、日本が変わると期待した外国人投資家である。 

 今回も同様の展開になる条件が整っている。

 (1)菅氏の改革アジェンダが明確であり、国民はまず間違いなくそれを支持すると思われること
 (2)株高の最大の条件である外国人の需給が陰の極にあること
 (3)コロナ終息に向けて経済が回復途上にあるのは明白なこと、である。

驚くべき菅氏の改革姿勢、それを受け入れる自民党

 菅氏の自民党総裁就任スピーチは、「行政の縦割りや既得権益打破、悪しき前例主義を打ち破って規制改革を進めることで、国民に納得してもらえる仕事を絶対に実行したい」である。成長なくして財政再建なし、デジタル庁新設、官邸主導による改革、地銀の再編改革、通信料金の引き下げ、国と地方に稼ぐ力をもたらすこと、その手段としての観光立国、ミクロでの所得引き上げ、GDP増大、産業企業のビジネス機会の創造など、外国人投資家が歓迎する政策のミックスである。

 コロナパンデミックが、改革の必要性を国民に思い知らせた。また安倍政権による官邸主導政治の確立が、菅新政権に絶大な改革推進力、実行力を与えている。これまでも菅氏はアベノミクスの政府日銀アコード、日銀・財務省・金融庁の3者会議定例化に尽力するなど、経済司令塔として実績があり、政策遂行に対する信頼感は群を抜いている。

日本株を売りつくしたグローバル投資家、姿勢転換は必至

 こうした日本国内の政治展開とは裏腹に、グローバル投資家は、徹底して日本株を売却してきた。外国人投資家は安倍氏が選挙で勝利した12年12月から15年6月末までに、23兆円日本株を買い越した。しかしそれ以降は日本株を売り続け、8月31日時点では買ったすべてを売却して、安倍政権発足以降累計では8,688億円の売り越しとなっている(図表3参照)。

 それは外国人主体の投機的ポジションを見ても顕著である。投機筋の裁定買い残は2018年初めには3兆円を超えていたが、直近では 5,000億円を大きく下回るようになっている。それとは逆に裁定売り残が積み上がっている。外国人投資家が日本株式投資に極端な弱気ポジションであることがわかる。図表 4に見られるように、これまで裁定買い残/東証株式時価総額比率0.2%が日本株式の大底のメルクマールであったが、それを大きく超えて低下している。日本株式は、東証時価総額に占める製造業比率が5割と高いために景気感応度が高く、世界経済の低迷局面では回避されるという特性がある。とはいえ、グローバル投資家は日本株式に対して、極端な弱気バイアスをもっているといえる。

 

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