【凡学一生のやさしい法律学】香港で起きていること~国家統治の基本となる三権分立(後)
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国の政治状況には、騒乱期と安定期がある。騒乱期には政治的争点は直ちに露見され、騒乱を激化させる。一方で、安定期には本来であれば政治的争点となる「不都合な真実」を支配勢力(権力者)がひたすらに隠蔽して、権力の安定、継続を企図する。
日本は不幸なことに、自民党による長期安定政権である。民主党による政権が短い期間はあったが、安倍晋三首相から公然と「悪夢の時代」と批判され、「不幸な時代」という烙印が押されている。国民は、何の証拠もない印象操作にまんまと騙され続けている。
以前の記事では、香港での政治問題である公訴権の在り方とその実情を、日本の現状を理解するための格好の「政治学上の参考例」として報告した。今回も、国家統治の基本となる三権分立論に関する香港での騒乱を解説する。(3)注目すべき事実
上述の9月1日付『産経新聞』の記事では、香港政府は高校教科書から「三権分立」の記述を削除させた、と最後に小さく記述されていた。権力は国民の政治意識を操作するために、まず公教育に介入し、不都合な内容を削除させ、不都合な内容を記述させないという手段に出る。
日本では主権者教育を公教育から長く排除してきた結果、日本の成人は主権者教育を受けたヨーロッパの未成年よりも権利意識政治認識が低い。グレタ・トゥーンベリ氏のように、高校生が世界的に問題となっているCO2排出問題に堂々と自分の意見を述べ、同年代の青年が同調するという社会現象は、日本人にはまったく理解できないことだろう。
日本政府がこのような主権者教育をまったく行わないまま、自民党は選挙権行使の年齢を18歳に引き下げた。日本のかつての農村の人々は、国家規模の利益誘導である日本政府の農本主義に感謝し、絶対的な自民党支持層であった。しかし自民党は、世界の経済情勢から日本の農家への過保護が許されなくなったため、農村の高齢化にともなって農家を見捨てる政策にシフトしている。
今では、農民票が自民党の堅固な票田であると認識する人はいなくなった。そもそも農業人口も減少している。そこで自民党の次世代の票田として候補に挙がったのは、主権者教育をまったく受けていない18歳、19歳の青少年だった。野党の政治は「悪夢の政治」だと公然と言い放ち、それが真実かのごとく信じ込ませるだけで十分だった。この結果、有権者となった18歳、19歳の人々は自民党の予想した通り、自民党に投票する大票田となった。
主権者教育を行わないままに選挙権を付与すると、「世間の雰囲気」だけで多数派の主張に流れるかということが見事に証明された。主権者教育を受けず、何も知らないままに働き蜂としての一生を終える日本の労働者のことを思うと、団塊の世代としては、このような世の中にしてしまったという無念の思いが尽きない。
(了)
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