生死の境界線(2)我が身に降りかからないと身につかず
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肺癌の主な転移先は骨と脳内部
8月17日の再検査結果を基に、9月23日に手術するというスケジュールが確定した。前回の記事で報告した通り、「転移の可能性が低く、摘出で肺癌がほぼ撲滅できるのであれば手術する」ことを決断した。しかし、病院側は念に念を入れて緻密な検査を続けた。「8月25日にもう一度、検査します。骨と脳を徹底的に調べます」と医者から通告された。
筆者が「なぜ骨と脳の再検査が必要なのですか?」と尋ねると、医者は「肺癌の転移先はほとんどが骨と脳内部なのです。貴方の場合は初期であり、転移スピードの遅い癌ですから転移している可能性は薄いと考えていますが、念には念を入れることが大切ですから」と丁寧に説明してくれた。
鬼のように感じていたこの医者に対して、自然と尊敬の念が高まってきた一方で、我が無知ぶりを知るにつけて、赤面する気持ちが高まってきた。「肺癌手術を体験する今後友人・知人から肺癌について相談があれば、この貴重な経験を踏まえて応じられるくらいの知識を身につけよう」と決断した。
8月25日に、骨と脳のMRI検査を受けた。骨の検査にはそれほど時間を要しなかったが、脳のMRI検査には造影剤が使われた。初めての体験である。このMRI検査結果の画像の出来栄えには驚いた。脳内の異常な点が1ミリ単位でわかる。ハードウェアである医療機器の性能の進歩は日進月歩である。ところが、その1ミリ単位の診断を下す核心となる医師の見立てが立ち遅れているという。「AI鑑定のほうが的確か」という説もある。解析データを用いてAIに経験を積ませていけば、いずれAI診断が主流になるであろう。
「検査の結果、脳および骨に転移している可能性はほぼないと判断しました」と主治医から申し渡されたため、「では9月23日手術というスケジュールでお願いします」と頭を下げた。これで覚悟は決まった。あとは段取りするのみ。前日の9月22日14時に病院へ到着し、入院室にすぐさま入った。永年、指導を仰いでいる気学の師匠からは「手術前日は、自宅から東方向にあたるホテルで一泊すること」の助言に沿って、9月21日はホテル泊とした。
友人たちの助言も名言、妄想さまざま
物知り博士といつも期待する友人Aは、「コダマの話を聞くと肺腺癌であろう。その手の癌は転移のスピードが遅いため、手を打つことができる。心配することはない。摘出手術をしても元気になっている連中はたくさんいる。もっとも厄介なのは、ステージ1でも脳に転移する小細胞肺癌だ。この肺癌で多くの友人たちがあっけなく亡くなった」と語る。本当に頼りになる物知り博士よ。
「コダマさん!肺を4分の1も切って今後の生活は大丈夫ですか?」と心配して声をかけてくれる友人Bもいる。「手術して1週間をメドに退院できるらしい」と身体への負担の軽さを説明すると「へー」と驚きの声を挙げた。もっとも頼もしい助言は経験者からのものだ。Cは肺癌摘出手術を受けてから10年存命しており、79歳のいまなお現役だ。「君の場合、発見が早かったから大丈夫」と激励を受けた。
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