ストラテジーブレティン(263)~コロナパンデミックの経済史的考察(4)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は2020年10月22日付の記事を紹介。
(3) ネット・デジタル市場の一気拡大
コロナで思い知った技術の大進歩
コロナ発生後の世界で人々がもっとも驚いたことは、いかに技術が進化していたか、ということであろう。在宅勤務も在宅授業、在宅診察などにより大半のビジネスと生活は、直接の人的接触なしに遂行できている。ネットワークの技術基盤がすでに整っていたのである。しかし古い仕組み、慣習、規則・規制、無知などによって、その実用化が阻まれ、これまでそうした市場・ニーズはまったく生まれていなかった。
コロナが加速するネット・デジタルの新市場
コロナでインターネット活用の障害物、古い制度・習慣・変わりたくない抵抗勢力が吹き飛んだ。人と人との直接接触を避ける切り札としてのネット化が、有無を言わせない至上命令となった。
なかでもテレワークの普及は、働き方を劇的に変え、新しいライフスタイルとビジネスモデルの激変を巻き起こしている。買い物はテレショッピングになり、外食を減らしてデリバリーが増え、子どもたちは塾の教室まで出かけていって学ぶのではなく、自宅でパソコンやタブレットなどの端末を使って学ぶ遠隔授業が日常になるなど、あらゆるものがインターネットに置き換えられていく。医師会などの抵抗で遅々として進まなかった遠隔医療も待ったなしとなった。
ビジネス、行政、社会のデジタル化が一気に進む
企業の外部閉鎖性の改革、労働時間の短縮・フレックス化、兼業・副業の常態化、テレワークの障害物であったハンコ文化の一掃、ドキュメントの紙からデータへの転換も一気に進んでいる。多様な方向で労働編成改革が断行される。業務の外部委託がさらに進み、コスト削減と新たな商品開発の両方が進展する。
テレワークは上司の目を気にする必要がなく、働き方の自由度が高まるように見えるが、実は労働が可視化され、情報が共有され厳しくモニターされるようになる。つまり個人労働の価値分析が徹底される。アリバイづくりで出社し、会議に出席しているだけの社員はあぶり出されつつある。年功序列雇用が色濃い日本は、ネット導入に大きく立ち遅れていたが、ここで一気に遅れが取り戻されるだろう。いわゆる日本固有のメンバーシップ労働からジョブ型労働への転換が大きく進展するだろう。
コロナは、日本の行政など社会システムのデジタル化の著しい遅れを露呈させた。菅新政権はデジタル庁の創設をはじめ、マイナンバーの浸透・行政の効率化、スマホ情報の社会的活用などの改革を政策課題の1丁目1番地に据えた。
政府のイニシャティブにより、教育のIT化、医療のIT化、金融のIT化、エンタメのIT 化(音楽、映画、ゲーム)など、社会各層でのネット化が一気に進むだろう。メディアの主役交代、都市集住の見直し、スマートシティ、セカンドハウス取得などの社会変化も予想される。
ネット・デジタルが市場の効率性を極限まで進める
ネット化によりあらゆる経済資源はネット上で顧客を見出し、適切な価格で評価されることになる。ネットにより市場原理が一層貫徹し、神の見えざる手がより細部にいきわたる。つまり、市場が効率化し生産性が高まる。また、ネットで生活コストは大きく低下し所得の余剰が生まれる。その余剰所得が向かう新規支出はどこになるだろうか、ライブ、実体験、人的接触が価値をもつ時代に入っていくように思われる。
(つづく)
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