2024年11月23日( 土 )

きめ細かい指導と品質を武器に コロナ禍でも売上を維持

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(株)SCホールディングス

生徒1人ひとりに合わせた指導

 (株)SCホールディングスは、代表取締役社長・吉田知明氏が2001年に福岡で創業。当初は家庭教師派遣業を手がけ、広島、岡山、滋賀、岐阜などに支店を広げていった。04年に社内ベンチャーとして「個別指導塾」を立ち上げ、しばらくの間は家庭教師派遣と個別指導塾とを並行して展開していたが、08年のリーマン・ショックをきっかけに個別指導塾へと軸足を移した。

 当時、不況により同社でも家庭教師派遣先の退会が相次いだため、家庭教師派遣の新規募集を縮小し、個別指導塾を中心とする方針を打ち出す。都会でのマンション増加と戸建住宅の減少という変化に加え、家庭教師であっても自宅に入れたくないという家庭環境の変化を踏まえた方針転換であった。これは全国的な傾向でもあったため、同社の「個別指導塾スタンダード」は、きめ細かい指導で成果を上げるとともに、リーズナブルな価格設定が好評を得て、生徒数を大きく伸ばすに至った。

個別指導塾スタンダード 同社の個別指導塾の大きな特徴は、1人の講師が1人ないし2人の生徒に対して、各々の理解度に合わせたカリキュラムで指導を行っていることだ。たとえば、中学3年生の生徒でも1年生の学習範囲が理解できていなければ、そこまで戻って指導を行う。逆に、基礎力が十分にある生徒であれば、入試に備えてより高度で実戦的な問題を先取りして取り組ませることも可能だ。

 同社が重視していることは、生徒に正しい勉強法と学習サイクルを意識させることだ。「勉強しても成績が上がらない」「勉強の仕方がわからない」「どこがわからないのかが、わからない」――このような悩みを抱える生徒に対して取り組んでいるのが、「やる気を引き出す指導」。同社では授業方針として「褒めて伸ばす」指導を心がけ、生徒が理解できたところを1つひとつ褒めていく。このようなきめ細かい指導は大人数での一斉授業ではできない利点といえよう。

コロナ禍の逆風のなかで

 新型コロナウイルスの拡大は、教育業界にも大きな影響をおよぼしている。大手でも生徒が離れ、売上が大きく落ち込んでいる事業者もある。倒産した事業者もあるなか同社も影響を受けており、加えて今年は学校の夏休みが短くなった分も不利に働いている。しかし、月単位で見ると時期によって売上が減少しているとはいえ、回復基調にあり、年間で見ると落ち込みは小さいという。今年度の売上に関して、吉田氏は「今後も引き続き生徒が戻ってきて、昨年度の売上を超えると見込んでいます」と語る。

 この理由について、吉田氏は「当社の強みは品質と価格競争力で、それを評価していただいています。従来、他社を選んでいた顧客層が新たに当社を選んでいただいたのだと思います」と分析する。

 「当社は他社よりも価格を抑えつつも、生徒からのアンケートでは以前よりも評価が高くなっています」(吉田氏)。

 同社は品質と価格競争力の両方で顧客から高い評価を得る努力を続けている。これを長年持続するのは容易なことではないが、現在ではオンラインも活用し、アルバイト先が少ない地方の優秀な講師の採用なども進めている。かつて自社のサービスの品質と価格競争力という強みを明確にしてリーマン・ショックを乗り切ったように、コロナ禍も乗り切れるものと確信しているのだ。

個別指導塾スタンダード 鯖江有定町教室 ただ、コスト削減を追求するあまり、オンライン化を進め過ぎてもよいわけではなく、生徒のニーズに合わせたバランスが求められると吉田氏は認識している。なぜなら、同社のサービスには、講師が対面で生徒を指導することでやる気を引き出すという点も含まれるからだ。進学校への受験に特化した塾であれば、全国の優秀な講師を確保し、オンラインで授業を提供することにより生徒を確保できるかもしれないが、同社はそれとは異なるという位置づけだ。吉田氏は対面とオンラインのベスト・バランスを探っており、コロナ禍での模索は続きそうだ。

世界一の塾に向けて

 SCホールディングスが統括するグループ企業は7社。メイン事業である個別指導塾運営を行う(株)個別指導塾スタンダードは、現在北部九州から中国地方、近畿、東海、北陸、関東、東北から北海道まで27都道府県に480教室以上を展開するまでに成長した。ゆくゆくは全国で1000教室の展開を目指しているという。また(株)スタンダード家庭教師サービスは、全国27都道府県で家庭教師の派遣を行っている。

 そのほか、国内では建設工事を手がける大祥建設(株)、コンサルティング業をメインとする子会社の(株)SCインベストメンツ、オンライン教育を推進する(株)オンライン教育ゲッツ、海外では香港で個別指導塾を運営する思湯達香港有限公司、業務システムなどの設計・開発を行う大連思湯達信息技術有限公司などを運営する。

 多角化を続けるように見えるが、やはり軸になるのは教育部門だ。同社は「世界の識字率を100%にする」という大きな夢を掲げ、全世界を視野に入れた事業展開を進めている。すでに香港で個別指導塾を展開しているが、アメリカ、中国、インドなどといった大国で事業計画を達成することが「世界一の塾を目指す」ための足がかりになると吉田氏は考えている。

 香港では日本人学校の生徒ではなく香港人の生徒を対象として個別指導塾を展開しているが、この点でも生徒1人ひとりに合わせてカリキュラムを構築する同社のノウハウと経験が生かされている。吉田氏は、「日本でも各地で教科書が異なり、生徒1人ひとり学習状況に合わせてカリキュラムをつくってきており、それは海外でも同様」と語る。

 コロナ禍により、新規の海外事業の展開については歩みを緩めざるを得ない状況であるが、新型コロナウイルスが収束していけば、引き続き「世界一の塾」に向かって邁進していく。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:吉田 知明
所在地:福岡市博多区店屋町8-17いちご博多明治通りビル7F
設 立:2011年11月
資本金:5,000万円
TEL:092-283-1188
URL:https://sc-holdings.co.jp


吉田 知明 氏<プロフィール>
吉田 知明
(よしだ ともあき)
1972年12月、鳥取県生まれ。岡山大学工学部卒。2001年、スタンダードカンパニー(現・(株)個別指導塾スタンダード)を創業し、家庭教師派遣事業を開始。11年に(株)SCホールディングスを設立し、代表取締役社長に就任。趣味はゴルフ。

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