経済対策として最悪のGoToトラブル
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を紹介する。今回は、「Go Toトラベルで、菅義偉氏、二階俊博氏、赤羽一嘉氏は、特定の事業者に巨大な利益を供与し、何らかの見返りを重視する一方で、Go Toで巨大な被害を蒙る者が存在する。経済政策として妥当でない」と訴えた12月7日付の記事を紹介する。
共同通信社が12月5日、6日に実施した全国電話世論調査で、菅内閣の支持率が前回11月調査から12.7%ポイント急落の50.3%になった。
また、政府の新型コロナウイルス対策を「評価しない」が55.5%、
感染防止と経済活動のどちらを優先すべきかの問いに対して、「どちらかといえば」を含め「感染防止」と答えた人が76.2%になった。「桜を見る会」疑惑に関して
安倍晋三前首相の国会招致を求めるが60.5%
政府による再調査を求めるが57.4%になった。安倍首相は桜疑惑や河井克行夫妻事件で追い詰められて、疑惑から逃亡するために病気退陣を演出した。
メディアがこの三文芝居をもっともらしく報じたために、安倍首相辞意表明後に内閣支持率が上昇した。
さらに、菅義偉氏を苦労人宰相として持ち上げる報道が展開されたために、内閣発足後の支持率が高く表示された。もとより、主要メディアの世論調査の信用度は著しく低い。
世論調査結果は質問文の作為によって誘導可能だ。
また、集計が適切に行われている保証もない。
それでも、同一社の世論調査結果の時系列推移にはある程度の実態が表れることが多いだろう。
この意味で菅内閣の支持率急落は注目に値する。新聞を購読する者が激減している。
インターネット上にニュースが配信されるため、多くの国民はインターネットからニュースを入手することが多い。
この意味で、インターネット上の報道ニュースのポータルサイトの影響が極めて大きくなっている。多くの市民がGoogleニュースやヤフーニュースを閲覧し、ここからニュースに関する情報を入手する。
この現状を踏まえて、メディアコントロールを強める権力はインターネット上のポータルサイトに対する影響力を強化している。ポータルサイトがトップページにどのような記事を見出しとして掲載するのかが極めて重要な意味をもってくる。
大手のポータルサイトは巨大資本が運営しており、この資本の属性が情報表示に強い影響力を発揮する。菅内閣が発足した直後に共同通信の世論調査で内閣支持率が急落したことは、最大のニュースである。
ところが、この特大ニュースがポータルサイトのトップ画面に表示されない。
典型的なインターネット上の情報操作だ。桜疑惑で安倍晋三元首相が検察の聴取を受けることも報じられている。
元農水相の受託収賄疑惑も表面化した。
まさに菅内閣は発足直後から重大危機に直面し始めている。だからこそ、内閣支持率急落の情報は極めて重大である。
その重要情報を隠蔽する意図がくっきりと浮かび上がる。週末に渡部建氏の記者会見を主要メディアが時間を割いて報道したが、安倍元首相問題、菅内閣問題から目を逸らすための「スピン」の色彩も強い。
菅内閣の支持率急落は順当。
想定された通りの現象。最大の問題は菅首相が国民に対する説明責任をまったく果たさないこと。
記者会見を開かない。
記者会見を開いても自由な質問を許さない。質問を事前に確認して官僚が答弁を用意する。
菅首相はそれを朗読するだけ。
LeaderでなくReaderにすぎない。
答弁の用意されていない質問に対して「自助」で答えることができない。菅内閣はコロナ感染症を第2類相当プラスに区分している。
もっとも強い警戒を必要とする感染症に区分している。
その下で、感染を全国に拡散するGo Toトラブルキャンペーンを展開していることは完全な自己矛盾。新規陽性者数が史上最高値を更新するなかで、専門家が人の移動を抑制する必要があると提言を受けながら、Go Toを見直さない。
記者会見での自由な質問に応じることは、国民に対する説明責任をはたすこと。説明責任を果たさずに自分の独断を押し通す。
官房長官時代からの横暴な態度を一向に改めようとしない。菅内閣が崩壊する大きなチャンスが接近している。
この千載一遇のチャンスを生かさない手はない。国民はコロナに対して極めて強い警戒感を有している。
その最大の理由は、菅内閣がコロナ感染症を第2類相当プラス指定感染症に区分していることにある。3月には突然の小中高一斉休校が強行された。
非常事態宣言も発出された。
このときのコロナ警戒感がそのまま維持されている。しかし、日本におけるコロナの実情はこの警戒感とは整合的でない。
50代以下の健常者の被害は軽微である。
他方、高齢者、基礎疾患を持つ人の被害は深刻だ。
従って、リスクの高い人を守ることに重点を置くべきだ。コロナ感染症の大きな特徴は、無症状の感染者(陽性者)が感染を拡大させることにある。
無症状の感染者による感染拡大を防がなければ感染拡大を抑止することは難しい。人の移動変化と新規陽性者数との間には明瞭な因果関係が観察される。
人の移動変化が3週間後の新規陽性者数に連動する。
Go Toトラベル事業は人の移動を拡大させるもの。新規陽性者数が急増している大都市部から地方に人が移動すれば、地方においても感染が拡大する。
感染拡大は高齢者、基礎疾患を持つ人、医療従事者、介護従事者に多大な被害を与える。国が推進すべきものでない。
国民が感染拡大阻止を優先すべきだと判断するのは当然のこと。ただし、一方で、経済活動の著しい悪化がさまざまな別の問題を引き起こしている。
自殺者の急増、とりわけ女性の自殺者の急増はコロナによる経済活動悪化と深く関係していると思われる。このときに大切なことは、政府が国民の生活をしっかりと支えること。
生活をしっかりと支えることが命を支えることにつながる。
守るべき人をしっかりと守り、コロナの正確な情報を流布して、適切な対応を共有する。そのための基本は「検査と隔離」なのだ。
Go Toトラブル事業はコロナ経済対策として最悪だ。最大の問題は水平的な公平が確保されていないこと。
Go Toで巨大な利益供与を受ける者が存在する一方で、Go Toで巨大な被害を蒙る者が存在する。
個人においても巨大な利益供与を受ける者とまったく利益を受けない者、巨大な不利益を受ける者が併存する。
これは経済政策として妥当でない。菅義偉氏、二階俊博氏、赤羽一嘉氏は、特定の事業者に巨大な利益を供与し、その見返りを何らかのかたちで確保することを重視しているのだろう。
基本的に「汚職の構造」であることが問題なのだ。PCR検査の費用にこそ競争原理を働かせるべき。
民間事業者が2,900円の価格でPCR検査を請け負うことができるのだから、PCR検査価格を引き下げることは十分に可能なはずだ。携帯電話の料金引き下げを強要する前に、PCR検査費用の引き下げを政府が誘導すべきだ。
1回2,900円の検査なら、1億人に検査しても2,900億円で済む。
Go Toトラブルキャンペーンに1.7兆円注ぎ込む前に、PCR検査を全国民に実施すべきだろう。「検査と隔離」が感染症対策の基本だ。
中国や台湾は「検査と隔離」によってコロナ感染収束をかなりの程度成功させている。
感染が収束すれば旅行需要は自律的に回復する。
飲食産業も状況が大幅に改善するだろう。ところが、菅義偉氏はGo Toトラブルキャンペーンに突き進む。
専門家が感染拡大を抑止するために人の移動を抑制することが必要、と提言するにもかかわらず無視し続ける。少なくとも、こうした疑問に対して丁寧な説明をすべきだ。
主権者が求める施策を、説明なく無視して実行しないなら、もはや民主主義政治とはいえない。
民主主義を破壊し、国民の命と暮らしを守らない菅内閣には早期に退場してもらうしかない。
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