2024年11月25日( 月 )

執念の人材教育で確立した組織基盤

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 商品や技術などさまざま切り口で指摘されるゼオライト(株)躍進の要因だが、取材を通じて浮かび上がったのは人材教育に投下されてきた膨大なエネルギーだ。多様な研修機関やコンサルティング企業に惜しみなく時間と費用を投入し、国内屈指の水の専門家集団と次世代を担う経営者を育てた。

水研究の鬼が先頭で学び社風変革

 現会長・勝美氏は、早くから社員教育の重要性に着目していたが、黎明期のゼオライトには工事トラブルなどで社員教育に取り組む余裕はなかった。古くから2人を知る経営者仲間は現場主義にこだわる恭輔氏と研修を積ませたい勝美氏との葛藤があったことを振り返る。

 ところが、会社を改革したい勝美の熱意は次第に恭輔氏を動かし社員教育に意識を向けるようになる。恭輔氏の凄みはひとたび決断すると「水のことで頭がいっぱい」(地場経営者)なはずなのに、自ら研修機関やコンサルタントで学んだことだ。人材育成、業績向上、経営理念など一回り以上年下の経営者たちが圧倒される気迫で学習した。

社内勉強会の様子
社内勉強会の様子

 手応えを得ると経営幹部や社員を研修に派遣し社員教育を本格化させる。外部だけでなく自社内での勉強会を積極的に開催し、恭輔氏自ら講師を引き受けた。学ぶ風土が確立されると外部研修は勝美氏らに委ねるようになるが、時には自ら研修会場へ迎えに行き勝美氏とともに社員に寄り添った。また研修講師に「○○をよろしくお願いします」と声をかけ、陰でも支え続けた。

 勝美氏も自ら学びながら社内にその成果を次々と落とし込んでいった。盛和塾、日本創造教育研究所、感動学、社内木鶏会などあらゆる勉強会や研修機関に取り組んだ。時には恭輔氏や経営幹部もともに学び、時には1つの研修に何十人も送り込んだ。ついには社内に講師を呼び寄せるほどのめり込んだ。

 その結晶化の例が昨年開催された(株)致知出版社主催の「第9回社内木鶏全国大会」だ。全国約1,200社が取り組む社内勉強会の代表5社の1つに選ばれ、嶋村謙志社長らが発表。当時の全社員の半数50名が会場に乗り込み、感動を分かち合った。

 また、社内に顧客や接点のある人に喜びを提供する部署「感動工房室」を設置。誕生日などの記念日に、色紙やアルバムなどに文章や写真を織り込んでプレゼントする。受け取った相手は文字通り感動を手にすることになる。講演会での話題を「いい話だった」と聞いて終わりにするのでなく血肉化してしまう勝美氏だが、経営者仲間が「誰もまねできない」と舌を巻いたのが、社員への朝食の提供だ。2004年ごろから取り組み、6年間にわたって継続された。

 こうしたなかで、1996年に新卒として入社してきた嶋村氏を鍛え上げた。組織が安定する前で、人材が次々と入れ替わるなかでも嶋村氏は現場担当者として東奔西走。一方で、ゼオライトの真骨頂である社員・幹部教育をやり抜いた。業務があまりにも多忙で、時には受講中の研修の離脱を余儀なくされたこともある。それでも学び続け、同じ研修を再受講し全うした。2016年には社長に抜擢され成長した組織を牽引する。ゼオライトを知る多くの経営者は創業家出身でない他人の息子である嶋村氏を厳しくも愛情をもって育てていたという。河村夫妻の取り組みが結実した。

 「水研究の鬼」河村恭輔氏は現場主義を貫く一方で、社員教育に挑んだ。勝美氏は恭輔氏の技術を世に送り出すために人材育成に全身全霊を注いだ。やがて、人材は定着、組織が強化され、得難い後継者・嶋村謙志氏を育て上げた。

【鹿島 譲二】

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