2024年11月24日( 日 )

コロナとともに去りぬの菅義偉氏

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を紹介する。今回は、「まずは、感染拡大推進のGo Toトラブルキャンペーンを一時中断することが先決だ。国民の命と暮らしを守らない菅義偉内閣には、即刻退陣が求められる」と訴えた12月9日付の記事を紹介する。


コロナ感染が順当に拡大している。

感染が拡大している理由は2つ。
第1は菅内閣が感染拡大を推進していること。
第2は季節的な要因。

冬季は感染が拡大しやすい。
気温、湿度が低下するとともに、部屋の換気が行われにくくなる。

菅内閣による感染拡大推進は「人の移動拡大推進」によっている。
人の移動と新規陽性者数との間には3週間のタイムラグが存在する。

11月の3連休に人の移動が拡大した。
その影響は12月中旬になって表れる。
季節性の影響も加味される。

コロナで重要なことは無症状の感染者が存在し、この無症状の感染者が感染を拡大させる原因になること。
感染が拡大する大都市から全国各地への人の移動が拡大すると、感染が日本全国に拡散される。

菅内閣、厚労省は、感染者を確認したら、その感染者を中心に追跡調査を行い、感染拡大を抑止する「クラスター対策」をコロナ対策の中核に位置付けた。
しかし、クラスター対策では感染抑止はできない。
なぜなら、クラスター対策の対象外になる無症状感染者が、感染拡大の主因であるからだ。

コロナ感染症に対する特効薬はまだ開発されていない。
このなかで、高齢者、基礎疾患を持つ人が重篤化するリスクが高い。
高齢者、基礎疾患を持つ人、医療従事者、介護従事者への感染を防ぐことが極めて重要だ。

政府は感染拡大を抑止するとともに経済活動の著しい悪化を防ぐことを求められている。
そのための正しい手順を設定することが必要不可欠。

正しい手順は、感染拡大抑止を優先し、その範囲内で経済活動の維持を図ること。
感染拡大を推進すれば、結局は極端な行動抑制策が必要となり、経済活動の著しい悪化を招いてしまう。
ところが、菅内閣は感染拡大推進をやめない。

Go Toトラブルキャンペーンは感染拡大の中心施策になっている。
とりわけ、感染が拡大している大都市から全国各地への人の移動促進は、感染を全国に拡散するうえで極めて有効な施策になっている。
「勝負の3週間」と銘打たれたが、「感染拡大推進に全力を挙げる勝負の3週間」になっている。

高齢者、基礎疾患を持つ人、医療従事者、介護従事者にとってGo Toトラブルキャンペーンは「菅内閣による殺人行為」と呼ぶべきもの。
国民の命と暮らしを守らない菅義偉内閣には、即刻退陣が求められる。

政府が取り組むべきことは、
1.検査の全面的な拡大
2.陽性者の行動抑止
3.正確なコロナリスクの周知
4.すべての国民に対する生活保障
5.重篤化リスクの高い人の保護
である。

感染症対策の基本は「検査と隔離」。
検査を徹底的に拡大して無症状の感染者が感染を拡大することを防がなければならない。

低価格で実施できるPCR検査の高価格を維持してきたのはなぜなのか。
国民の命と暮らしよりも「利権」が優先されてきた。
PCR検査を無料化し、徹底的に検査が行われるようにすべきだ。
同時に、陽性者の行動を抑止する実効性のある措置が取られる必要がある。

一方で重要なことは、コロナ感染症の正確な情報を流布すること。
日本においては、コロナ感染症で重篤化する比率が決して高くない。
とりわけ、高齢者でない健常者の重篤化リスクは高くない。

重症化しない感染者の入院措置が医療機関の機能をマヒさせている現状を踏まえて、実態に即した対応を取ることが求められる。
まずは、感染拡大推進のGo Toトラブルキャンペーンを一時中断することが先決だ。

新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、12月9日の衆院厚生労働委員会の閉会中審査で「Go Toトラベル」について、「東京などステージ3相当の地域については一時停止すべき」との考えを示した。

尾身氏は「分科会はステージ3相当の地域は、感染のこの状況を打開するには、Go Toを含めて人の動き、接触を控える時期だと思う」と述べた。

さらに「ステージ3ということは東京を含めて一時停止すべきか」との質問に対して、「分科会はそう思っています」と答えた。

ステージ3は、4段階中2番目に深刻な状況を指すもの。
尾身氏は、これまでに東京23区や大阪市などが相当するとの認識を示している。

尾身氏は上記の衆院厚生労働委員会・閉会中審査で、「今の感染状況のときは中止した方がいいと再三申し上げている。早く感染を下火にして『ステージ2』にして、しっかり感染を抑えてからやる方が国民の理解も得られやすいのではないか」と述べた。

明確に、東京のGo Toトラブルキャンペーンからの除外を提言している。
それも、「今の感染状況のときは中止した方がいいと再三申し上げている」としている。

ところが、NHKはこの事実を歪曲して報道している。
NHKニュースウオッチ9は、尾身氏の発言として「Go Toを一時中止することもオプションの1つ」とだけ伝えた。

事実と違う。

尾身氏は、東京もステージ3に移行しているとしたうえで、ステージ3の地域である東京のGo Toトラベルは一時中断すべきことを再三申し上げていると明言している。
菅義偉氏は、NHKのこの事実を伝えさせたくない。

菅首相筋からこの意向が伝えられているか、NHKの番組編集者が菅義偉氏の意向を忖度して、尾身氏による東京のGo Toからの一時除外提言をもみ消している。
NHKは救いようがないほどに腐敗している。

しかし、東京都のGo Toからの一時除外は時間の問題。
なぜなら、菅義偉氏が感染拡大を推進し続ける間、感染拡大が持続するからだ。

12月中旬にさらに感染拡大が確認されれば、結局、Go To一時中断が強制されることになる。
そうなると、宿泊、飲食の産業にとって、もっとも痛手が大きい年末年始の行動抑制が強制されることになる。

菅義偉氏は大きな勘違いをしている。
菅首相は自分を独裁者だと勘違いしている。

主権者は国民。
国民が菅氏にNOを突きつければ、菅氏は存立の基盤を失う。

官房長官の時代はこの因果関係から隔離されていた。
官房長官記者会見でいかなる横暴、暴走を繰り返しても、菅氏の横暴に強い光は当てられなかった。
このときの「成功体験」が、菅内閣の短命化に大きな寄与をはたす。

官房長官時代の感覚で、答弁拒否、一方的説明、強権発動がそのまま通用すると思い込んでいる。
学術会議問題で波紋が広がったことを「想定通り」と笑いを含んで答弁するに至っては、末期の近さを象徴する。
菅義偉氏はまもなく民主主義の意味を思い知ることになる。

高齢者、基礎疾患を持つ人、医療従事者、介護従事者がGo Toトラブルをどのような気持ちで見つめているのか、まったく理解しない。
まったく考えようともしない。

哀れなる想像力の欠落。
頭のなかには自分の利益以外の何も存在しないのだろう。
コロナ感染拡大推進の菅義偉氏は、コロナとともに去りぬことになる。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

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