2024年12月23日( 月 )

菅牛歩最終施策はGoTo地獄

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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を紹介する。今回は、「変異種に感染した人を確認したら入国禁止にするのでは遅い。変異種に感染した人を確認することを防ぐために入国禁止措置を取るのが当たり前の対応。海外で変異種が発見され、入国規制を強化するのだから、まず水際で人を入れない措置を取るしかない」と訴えた1月9日付の記事を掲載する。


菅義偉首相が1月8日夜のテレビ朝日の番組「報道ステーション」に出演した。この出演を受けて、内閣支持率はさらに加速度をつけて急落することになるだろう。

生出演風に放送されたが、実際はVTR収録。菅首相側が修正可能であることを求めた結果だろう。司会の富川悠太アナはいつから政府広報官になったのか。コロナで重大な損傷を受けたのではないかと推察される。

昨日の本ブログ、メルマガで菅内閣の入国規制が完全なザル対応であることを指摘した。昨年12月28日に菅首相が「国民の皆さんの命と暮らしを守るため、先手、先手で対応するために、全世界から外国人の新規入国者の停止を発表させていただきました」と述べた入国規制「強化」だ。

政府のよいしょ要員と見られる杉村太蔵氏がよいしょ番組の「サンデージャポン」12月27日放送で、「全世界からの入国停止を発表したが物すごく早く、方針が変わったなと感じた」とお追従(ついしょう)を述べた件(くだん)の施策だ。

現在、日本に入国する外国人の中心はビジネストラックと呼ばれるものによる。入国規制「強化」と言いながら、このビジネストラックを残存させてきた。12月28日に菅義偉氏が「先手先手」を自画自賛した施策も、ビジネストラックによる入国は温存するというものだった。

入国規制の効果がまったく発生しない完全なザル対応だ。1月7日に緊急事態宣言が発出され、さすがにビジネストラックも禁止措置を取る必要があるとの当然の議論が生じた。政府がビジネストラックによる入国も禁止するとの報道もあった。

ところが、菅義偉氏がビジネストラックによる入国を禁止する措置に強く反対して、この入国措置が温存されることになった。朝日新聞が伝えている。「ビジネス関係者の入国、一転継続 『首相に強い思い』」(https://bit.ly/3otguRf) 。

1月5日に菅首相と政府関係者による検討の場で、菅首相が、例外扱いしてきた11カ国・地域からの入国容認を継続することを強く主張して方針が覆されたのだ。菅首相の言動にはGoToで感染爆発を引き起こしたことに対する反省が微塵も感じられない。

この問題をテレビ朝日の政治部長が問いただした。菅首相は変異種の感染者が出れば、その国については入国禁止措置を取ると発言したが、この発言自体があり得ないもの。危機管理の根本をまったく理解していないことがあらわになった。

当然、テレビ朝日政治部長が矛盾を突く局面だが、富川悠太アナが追加の質問を遮って、菅首相にメッセージを発する時間を与えて締めくくった。八百長試合そのものだ。富川悠太アナを更迭させろとの意見がテレビ朝日に殺到することは間違いないだろう。

そもそもの間違いは昨年11月21日からの3連休の前に感染抑止の強力な施策を打たなかったこと。その対応でさえ「後手後手」のものだが、年が明けて感染が爆発してもなお、入国規制を強化しない菅首相の行為はもはや犯罪的レベルだ。

私は11月24日付メルマガ記事「反知性主義支離滅裂政策が日本を亡ぼす」(https://foomii.com/00050)に次のように明記した。

「11月3連休の人の移動を全面推進したことで、12月中旬の新規陽性者数が一段と激増することが予想される。その主因がGoToトラブルキャンペーンにあることをあらかじめ告知しておく。12月中旬に感染爆発状態が広がれば、年末年始の人の移動について、全面的な抑止措置が必要になる。大津波特別警報を発令しておきながら、GoToBeachキャンペーンを展開するような非論理性、反知性主義、支離滅裂政策が日本を破綻に追い込む」。

菅首相の「変異種の感染者が出たら入国を禁止する」発言に目が点になった人はまとも。この発言をそのまま放置した富川アナは報道番組司会者完全失格だ。国内への感染拡大を完全阻止するのが「水際対策」。感染者が確認されたら入国禁止措置を取るというのは「水際対策」でない。

昨年1月23日に中国政府が武漢市を封鎖した。この日に台湾政府は中国武漢市からの入境禁止措置を取った。台湾政府が動いたのは1月23日ではない。

一昨年12月に武漢市の異変を確認し、12月31日には武漢市からの入国者に対する検疫措置を強化している。これを「先手先手」の対応という。

日本の安倍首相は中国政府が武漢市を封鎖した翌1月24日に、在中国日本大使館HPで、中国国民に対して、2月の春節の休みを利用して日本を訪問することを呼びかけた。これが日本政府の対応なのだ。このときから一貫して日本政府は検査抑制を続けていた。感染爆発が現実化している今も、日本政府は検査抑制の基本スタンスを変えていない。絶望的だ。

コロナ変異種の感染力が強いと見られている。南アフリカで確認された変異種に対してはワクチンが有効でない可能性が高いことも指摘されている。ウイルスが日本に侵入すれば、検査を抑制している日本では、あっという間に感染が爆発するだろう。

だからこそ、強度の水際対策が必要なのだ。変異種に感染した人を確認したら入国禁止にするのでは遅い。変異種に感染した人を確認することを防ぐために入国禁止措置を取るのが当たり前の対応。海外で変異種が発見され、入国規制を強化するのだから、まず水際で人を入れない措置を取るしかない。

感染が抑制されている11の国・地域を対象に、入国規制を緩和する例外措置が取られてきたが、それらの11の国・地域に変異種が侵入している可能性は十分にある。感染者を確認してから動くのでは遅いのだ。感染者が確認されてから動くことを「後手後手」と表現する。

菅義偉氏も脳に重大なダメージを受けているのではないかと危惧する。菅首相が番組に出演して質疑する機会を得たなら、番組関係者がこの部分を問わなければ何の意味もない。テレビ朝日の上層部は報道番組を政府の広報と考えているのだろう。

しかし、現場が何の抵抗も示さぬなら報道は完全な死を迎える。緊急事態宣言も首都圏の4知事が発出を要請したから、やむを得ず菅首相が動いたに過ぎない。本来は昨年11月の段階で断固とした対応を示すべきだった。

そもそも、昨年7月下旬にGoToを強行始動させたことが間違いのもと。菅首相は12月27日までGoToトラベルを止めなかった。感染が爆発的に拡大するなかでGoToの旗を振り続けたのが菅義偉氏なのだ。完全なるA級戦犯だ。

GoToEatは会食を「命令形」で税金投入するもの。それが一転してDon‘tEatに転じているのはブラックジョークでしかない。この矛盾を突かなければ報道番組に首相を呼ぶ意味がない。

コロナ感染は午後8時以降に限って生じるものではない。午後8時以降の飲食を控えるように訴えることは、飲食をともなう会合を午後8時までに実行することを指令しているのに等しい。昼食で会食すればやはり感染は拡大する。会食という行為が危険であるなら、会食を控えることが必要とのメッセージを出すべきなのだ。現在の政府のアピールでは、午後8時までなら会食OKと多くの人が判断するだろう。

国会議員は午後8時まで4人以下の会食をOKとするルールを与野党がつくろうとした。頭がいかれてしまっているようだ。国会議員はまず範を示して、「会食を行わない」ことを決定すればよいだけのこと。打ち合わせが必要なら、会食せずに、マスクで打ち合わせをすればよい。無能政府によって国民が地獄に導かれることを回避しなければならない。無能政府の一刻も早い除去が必要不可欠だ。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

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