シェア争いが激しい韓国フードデリバリー市場(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
韓国人の日常生活は、コロナ禍で変化を余儀なくされている。そのなかでも、飲食店利用の減少と在宅時間の増加により、食生活に大きな変化が起こり、フードデリバリーアプリ市場が急成長を遂げている。
コロナショックで外食産業は大打撃を受けており、店舗で食事する人よりフードデリバリーを頼む人のほうが今では5倍~6倍多いという大きな変化が起きている。デリバリーアプリの取引額は約9兆ウォン以上となり、フードデリバリー市場全体の半分近くを占める。フードデリバリー市場全体のなかでアプリ市場は2013年には3%、15年には10%にすぎなかったが、現在は50%近くまで増加した。デリバリーアプリのユーザー数は昨年に2,500万人を突破し、韓国人の半分以上がアプリを使っているということで、驚くばかりだ。
韓国には、代表的なアプリ会社が3社ある。デリバリーアプリの元祖は「配達桶(ベダルトン)」だ。世界初のデリバリーアプリで10年に登場した。創業者は、家に溜まっていたチラシをどのように処分するかと悩むなかでデリバリーアプリのアイデアをひらめいたという。現在の市場1位は「配達の民(べダルミンゾク)」で世界最大手のドイツ企業に買収されたが、昨年の売上高は5,654億ウォン。もう1社は「ヨギヨ」である。
一方、アプリ市場への新規参入も相次いでおり、激しいシェア争いが繰り広げられている。韓国ネットショッピング大手である「クーパン」も市場に参入した。自社の物流網を活かした事業参入である。快進撃を続けており、現在は200万名以上のユーザーを確保している。もう1社は、同じくネットショッピング事業を展開している「ウィメプ」である。フードデリバリー以外に、ピックアップサービス、予約サービスなどを導入し、ユーザーの注目を集めている。
デパートも、この市場に参入している。「現代百貨店」は、デパ地下で販売している高価な食料品や飲食の配達に焦点を合わせている。デパートのデリバリサービスは大きくわけて2つあり、1つめはオートバイで自宅まで配達してくれるサービス、もう1つはデパートで待たずに食品を受け取ることができるサービスである。
また、アプリ会社が提供する配達サービスを利用するケースとともに、配達代行会社を活用するケースもある。配達代行会社は飲食店に配達員を送り、配達を代行するサービスだ。配達員の人材不足が深刻化しているなか、このサービスの利用も増加の一途をたどっている。
飲食店が大きな市場を形成しているデリバリーアプリ市場の恩恵を受けるためには、アプリ会社に加入するほかない。しかし、複数のアプリに加入してチャンスを増やそうとすると、手数料の負担が重くなるようだ。このようにデリバリーアプリ市場は拡大しているが、業界の課題も露呈している。1つめの課題は、配達員はフリーランスであり、保険などの加入も個人で行うしかなく、何の保証もないという点だ。もう1つの課題は、アプリ企業の寡占化が進むと、今の手数料の相場が続くという保証がなく、アプリ会社の方針次第で飲食店の経営が左右されかねないという点だ。
韓国では、このように加熱するフードデリバリーで熾烈なシェア争いが展開されている。
(了)
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