政策運営自体が菅首相追及のツボ
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「菅首相の問題は話し方の問題ではなく、政策運営そのものが問題。政策運営が正しければ、話し方が間違っていようが、話し方が下手だろうが、大した問題でない」と訴えた1月31日付の記事を紹介する。
コロナ感染の被害は拡大している。
世界全体でのコロナ感染者数は1億人を突破。
死者は220万人を超えた。1日当たりコロナ死者数は、昨年は5,000人水準で推移したが、年明け後の2021年1月には1万4,000人水準に急増している。
ワクチン接種が始動したことで、一部で楽観論が浮上しているが、実態と大きな乖離がある。
ワクチンの副反応も懸念される。
日本では国民の半数以上がワクチン接種を忌避するのではないか。ワクチン接種のリスクは決して小さくない。
子宮頸がん予防のワクチンでも重大な問題が報告されている。世界で新型コロナ変異株が確認されている。
感染力の強い変異株、毒性の強い変異株の確認が報じられている。日本はコロナ対応に失敗した。
東アジアの特性で日本の被害状況は相対的に限定されているが、東アジアのなかでは最悪のパフォーマンスを示す。オーストラリアの有力シンクタンク・ローウィー国際政策研究所は、1月28日までに世界各国・地域が新型コロナウイルスにどのように対応したのかを指数化して算出したランキングを公表した。
調査対象は98カ国・地域で第1位にランクされたのはニュージーランド。
日本は第45位だった。東アジアの人口あたりコロナ死者数は圧倒的に少ない。
何らかの要因が影響していると見られる。
遺伝子要因、免疫要因、食物要因などが指摘されている。遺伝子要因ではネアンデルタール人由来の遺伝子多様体を保持している人の重篤化率が高いとの仮説がネイチャー誌に掲載された。
東アジアにはネアンデルタール人由来の遺伝子多様体を保持する人がほとんどいない。
このことが東アジアの被害軽微の要因になっているとの仮説が提示されている。免疫要因とは東アジアの人々がインフルエンザ等の免疫を保持しており、このことが新型コロナ感染を抑止しているとするもの。
食物要因とは米ぬかに含まれるLPSという物質が免疫能力を高めているというもので、コメを主食とする地域でコロナ被害が小さいとの研究報告がある。東アジアでのコロナ被害が相対的に軽微であることは不幸中の幸いだが、その東アジアのなかで日本のパフォーマンスは最悪である。
最高評価を得たニュージーランドでは、当初から徹底的なロックダウン対応が実行された。
ウイルス封じ込め政策が実行されて大きな成果を上げた。台湾は一昨年12月31日の段階で武漢市の異変を把握。
直ちに水際対策を強化してウイルス封じ込め政策を実行した。
その結果、極めて良好な結果を生み出した。日本政府は「検査と隔離」という感染症対策の基本を無視し続けてきた。
いまなお、無視し続けている。さらに、GoTo事業を全面的に展開して政府が感染拡大を推進した。
昨年7月から8月にかけて新規陽性者数が増加するなかでGoToトラベル事業を強引にスタートさせた。夏場の季節性で新規陽性者数が抑制されたものの、10月1日からは東京都がGoToに組み込まれ、首都圏から日本全国にウイルスが拡散された。
その結果として11月以降に感染爆発という事態が生じた。日本におけるコロナ感染爆発は菅内閣による人災。
本年1月下旬から2月初旬に観察される新規陽性者数減少は、年末から1月3連休までの日本国内における人の移動抑制を反映するもの。しかし、3連休が終了した1月11日以降は人の移動が微増傾向を示している。
東京都の新規陽性者数が500人から1,000人の間で推移しているが、このまま500人以下の方向に減少を続けると決めつけるのは早計だ。
再び1,000人を突破することも十分に考えられる。日本経済は20年4~6月期に激しい落ち込みを示した後、7~9月期、10~12月期にかけて持ち直し傾向を示したが、11月中旬からコロナ感染爆発が発生して経済活動再抑制の方針に回帰したから、11月以降、再び経済悪化に転じている。
菅内閣の「後手後手・小出し・右往左往」コロナ対策が東アジア最悪のパフォーマンスを生み出す主因になっている。
菅内閣の右往左往が諸悪の根源。
経済活動はコロナが収束すれば自律的に活発化する。
ところが、菅内閣はコロナ収束を優先せずに、コロナ感染が拡大するなかで、コロナ感染推進の政策を実行した。GoToトラベルで人の移動が拡大すれば、感染も拡大する。
旅行者は全国各地で会食を楽しむ。
その会食が感染拡大の主因になる。菅内閣はGoToイート事業で会食も積極推進した。
コロナ感染が収束した段階で実施するならまだしも、コロナ感染が拡大傾向を示すなかで、強引にGoToトラベル、GoToイートを強行した。その順当な結果として感染爆発が生じた。
菅首相の責任は計り知れない。鉱工業生産指数は昨年5月を底に10月まで順調に上昇した。
しかし、11月以降反落している。
景気ウォッチャー調査でも景気の現状判断DIは10月をピークに大幅反落している。昨年12月の有効求人倍率は1.06倍で11月と同水準だった。
安倍元首相の唯一の自慢だった有効求人倍率も、いよいよ1倍割れ目前の水準に急落している。私が執筆している会員制レポート『金利・為替・株価特報』
http://uekusa-tri.co.jp/report-guide/
では、21年1月25日号タイトルを
「好材料出尽くし+コロナ=高値波乱局面も」
として、株価下落に対する警告を発した。昨年は20年1月27日号タイトルを
「株価循環視点からの内外株価下落圧力警戒」
とし、第9節【投資戦略】中規模調整に警戒 に株価下落警告を発した。その直後から3月にかけてコロナ大暴落が生じた。
今回も、レポート発行直後から株価波乱の端緒が示され始めている。内外でコロナを理由とする超巨大経済対策が提示、実行されてきた。
とりわけ、日本ではバブル期以来となる「過剰流動性」の供給が行われている。その「過剰流動性」の力で株価が押し上げられてきたが、経済政策が目的とする国民生活の安定はまったく実現していない。
菅内閣は利権がらみの財政支出ばかりを拡大させて、すべての国民の命と暮らしを守ることを疎かにしている。自民党の職員全員にPCR検査を実施したと伝えられているが、どうして自民党職員に対しては全員検査を行い、国民に対しては全員検査を行わないのか。
コロナ対策の基本は「検査と隔離」だ。
1回2,000円の検査なら10億回の検査費用を計上しても2兆円だ。
GoToトラブル事業に2.7兆円の予算を計上する資金の余裕があるなら、GoToトラベルの前にGoTo検査予算を計上すべきだ。コロナ感染が疑われるのに検査も受けられない。
検査がようやく行われて入院が必要と判断しているのに、宿泊療養施設にも病院にも収容されず、そのまま死に追いやられる国民が続出している。「放置民」「放置民死」は菅内閣が生み出したもの。
73兆円も補正予算を計上しながら、コロナ感染者に対する最低限のケアも出来ないなら、責任を取って内閣総辞職すべきだ。
安倍首相も謝罪の言葉を並べるだけで責任を取ろうとしなかった。
菅首相は、この点でも安倍首相を承継している。立憲民主党の蓮舫議員が厳しく詰め寄ると、その詰め寄り方だけを取り上げて、あたかも野党が悪いかのような印象操作がなされる。
政権与党の工作員と考えられる者の見え透いた行動だ。
このような工作員の「揚げ足取り」に遭わないよう、野党も追及の仕方を考えるべきだ。菅首相の問題は話し方の問題ではなく、政策運営そのものの問題。
政策運営が正しければ、話し方が間違っていようが、話し方が下手だろうが、大した問題でない。
政策運営の根本が完全崩壊していることが問題なのだ。検査と隔離の基本を守る。
感染者を確実に保護する。
すべての国民の生活を確実に支える。
この3つさえできていればよい。菅首相はこの3つの責務のうち、どれ1つ実行できていない。
この事実を指摘して菅首相の責任を問うこと。
野党はツボを押さえて菅首相を追及すべきだ。
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