半導体市場の変化で快進撃のTSMC(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
新型コロナウイルスの感染拡大で、ネット取引が急増して半導体の需要が急激に伸びているが、今後はオンライン取引やAIによる技術革新よりも、自動運転が半導体需要の増加をけん引すると予測されている。
今回は、急拡大する超微細工程の半導体生産を一手に引き受けて世界で1人勝ちしている台湾企業TSMCと、それを支えているオランダ企業ASMLを取り上げたい。最近のニュースによると、自動車メーカーは半導体が足りず、自動車の生産を縮小せざるを得なくなったという。半導体の需要が急激に増えているなか、半導体受託メーカーは高付加価値の半導体生産を優先して生産しているが、車載半導体は付加価値がそれほど高くないためだ。ホンダやフォルクスワーゲンも、生産スケジュールの調整を余儀なくされている。今後は、自動運転の時代が本格的に到来すると、半導体不足はさらに加速するという。
半導体産業は大きく分けると、2つのカテゴリがある。半導体を設計する企業と、半導体を受託生産する企業である。半導体の製造工程が超微細化しており、製造装置をそろえるために天文学的な規模の資金が必要となるため、主な半導体の受託企業(ファウンドリー事業)は、実質的には台湾のTSMC、韓国のサムスン、米インテルの3社となっている。
そのなかでも、TSMCは市場の半分以上のシェアを占めており、他に並ぶものがないほどに優れた存在である一方、3位のインテルは7nm(ナノメートル)の生産工程でつまずいて、受託生産の終焉を迎えつつある。インテルの時代の幕が下り始めたのは、それだけではない。「インテル入っている」というキャッチコピーでもおなじみのインテルは、かつてコンピュータ市場をリードしていた時代の寵児であったが、半導体業界に変化が起き始めているのだ。
インテルに標準チップの生産を委託していた時代は終焉し、各分野で自社開発チップを生産する時代が到来した。アップルは、モバイルに最適化されたiPhone向けのAシリーズチップの開発にとどまらず、ノートパソコンのMacBook向けのMシリーズチップを自社設計し、話題を呼んでいる。スマホの頭脳に当たるアプリケーションプロセッサ(AP)の王者は米国のクアルコムであるが、クアルコムはそのチップを自社で開発、設計している。
クラウドサービスの世界No.1であるアマゾンも、クラウドサービス向けのクラウドサーバーに最適化されたチップを自社で開発、設計した。GoogleもAI演算用のチップを自社で開発、設計した。
このように、今まではインテルに開発を依頼していたチップを自社で開発・設計して、生産だけを受託生産会社に依頼するようになった。半導体の生産を受託メーカーに依頼する理由は、半導体の生産工程が超微細化することによって、莫大な投資が必要になり、その設備までをそろえて生産するのはハードルが高いからだ。たとえば、7 nmからはEUVという露光装置が必要になるが、これは1台当たりの費用が約200億円で、メンテナンス費用も大きな負担になるという。
(つづく)
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