2024年12月22日( 日 )

【IR福岡誘致特別連載23】もう一度、IRの基本要件を解説する

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「安倍・トランプ密約」で始まったIR誘致開発

 IR長崎のRFP(提案依頼書)申請に関して、中華系投資開発企業Oshidori International Developmentと米国パートナー企業Mohegan Gaming&Entertainmentが提携を発表したが、IR誘致開発は「安倍・トランプ密約」によって始まり、IRに関するすべての法律は、その主旨を忖度した賢く優秀な官僚によりその枠組みがつくられている。

 政府は、海外投資開発企業と国内大手企業(デベロッパーなど)、地元財界企業の3者でIR共同事業体(コンソーシアム)を構成・構築し、そのエクイティ(株主資本)を共有して実行するよう指導している。

 しかし、海外IR投資企業は、少しでも多くの権利を保有して莫大な利益を得たいと考える一方、ほとんどの国内大手企業と地元企業は、本音では海外投資企業にIR共同事業体のほとんどの株主資本を保有してもらい、資本参加はほんの一部で良いと考えている。IRの仕事を手掛けても、資本参加をチャンスではなくリスクと捉えており、できるだけリスクをもちたくないのだ。この考え方は、海外IR投資企業には理解できず、ここに国内企業との大きな食い違いが生まれている。

 首都圏は地方都市とは異なり、地元財界企業という観念はなく、多くの企業がそれぞれの分野で著名な企業であり、本社も多い。そのため、IR共同事業体のRFPの公開入札は、まさに企業がそれぞれにグループを形成して競争原理が働き、合法的な競争入札が可能である。IR関連法の意図する通り、首都圏の候補地(築地市場跡地、有明、横浜など)はこの枠組みで問題はない。

 ところが、当地の福岡都市圏を含めた、長崎・佐世保市などの地方都市では、これを実践する方向に進まず、IR大阪でさえも同様であった。IR大阪では昨年、米国MGMリゾーツ・インターナショナルがオリックス(株)と参画することが、RFPの入札開始前に決まった。当時、参加を希望していた他の海外投資企業が入札資格を構築できず、参加を辞退したためだ。

 結果として、関西電力や大阪ガスなどの地元財界が1つにまとまり、オリックスを主導するシニア・チェアマン宮内義彦氏に追随するという象徴的な出来事となった。首都圏以外では、行政による「公開入札」の仕組みは機能せず、意味をなさないのだ。

IR関連法で目論まれた「地方都市外し」

 さらに、IR関連法である施設施工令でも、最初から「地方都市外し」を目論んだ仕組みになっている。たとえば、IRのホテル、国際会議場、国際コンベンション施設など、すべての施設面積に下限が設けられている。これも、トランプ元大統領との「密約」を忖度した大都市でのIR設置を目的とした規制だ。地方の中堅都市でIR誘致開発事業が不可能になるため、当初は苫小牧市や和歌山市、長崎市は、この法律の制定に猛反対していた。

 しかし、結果的には、当時の安倍政権の思惑通りにはいかず、米国のトランプ元大統領の大口献金企業であり、大都市IR進出を目的としていたラスベガス・サンズ(Las Vegas Sands)やシーザーズ・エンターテインメント(Caesars Entertainment)、ウィン・リゾーツ(Wynn Resorts)は、日本の封建的な行政や制度に嫌気がさして、残念ながらすべて撤退した。これらの法律は当初から、米国IR企業のためにつくられていたのだ。

 筆者が当初から、首都圏、大阪都市圏、福岡都市圏の3カ所しか採算が合わないと伝えてきたのは、IR関連法が大都市設置を目的としているためだ(名古屋都市圏は基本的に文化が異なる)。加えて、IR長崎のように海外観光客に頼る集客計画ではリスクが高すぎて、国内の誰もがコロナ禍では手を出さない。北海道の鈴木直道知事の判断は、誠に賢明であった。

 公開競争入札では、IR大阪の事例のように、地元企業が海外投資企業と提携して臨むのはあり得ないことを、官僚は十分に熟知しているはずだ。

「錦の御旗」となる著名企業の参加が必須

 当地であるIR福岡とIR長崎では、地元九州企業の経済団体である七社会(九州電力、JR九州、西日本鉄道、西部ガスなど)も、必ず1つにまとまって行動する。そのため、長崎県行政はIR長崎の誘致に向けて、これらの企業に積極的に協力依頼をしているが、IR長崎の候補地であるハウステンボスの度重なる閉鎖危機の歴史から、表向きの姿勢は別として、具体的に協力する意向は一切ない。

 そのため、著名な国内企業がIRに事業参加することがイメージできる「錦の御旗」となるIR大阪のオリックス・宮内氏のように、カリスマ的な人物の登場がIR成否を左右する。地方では、IR大阪のように国内企業は「錦の旗印」のもとに一斉に集うため、実質的には競争は起こらず、地方行政による「公開入札」は機能しない。

 福岡市行政や長崎県行政は、あくまでも行政上の申請者であり、IR事業共同体の設立の準備作業や実務などには不向きである。また、先日のニュースでも、長崎県の平田研副知事が詳しく述べていたように、その準備作業の多くの部分は、自民党の秋元司衆議院議員、吉川貴盛元衆議院議員のIR収賄事件以後、ますますの法の縛りが強くなり、基本的に行政が行うことできない。IR誘致開発では民間が先行し、「錦の御旗」となる強力な著名企業の参加が必須である。

【青木 義彦】

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