常識としてのステーブルコインの動向(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
仮想通貨「ビットコイン」の価格上昇が毎日、新聞上を賑わせている。各国の中央銀行はデジタル通貨の導入の準備に余念がない一方、既存の金融システムを根本から揺るがす可能性をもつ分散型金融やステーブルコインにも注目が集まっている。
ステーブルコインの種類
もっとも一般的なステーブルコインは、1対1で法定通貨に直接紐づけされており、発行者が保有する法定通貨の量に応じて発行される。ところが、この方法では、発行者が本当に発行した価格の法定通貨をもっているのかわからない点が課題となる。加えて、発行者への「中央集権化」の問題も存在する。
そこで次に、法定通貨に裏付けされた一般的なステーブルコインと違い、仮想通貨に裏付けされたステーブルコインがつくられた。これは、法定通貨に紐づけられたステーブルコインに比べて、スマートコントラクト(※)上でコインを発行する過程が透明性をもって行われること、脱中央集権化したコイン発行システムであることが特徴だ。しかし、担保となる仮想通貨の価格の変動が激しいことがリスク要因である。
3つ目のステーブルコインは、アルゴリズムによってコイン発行量を調節し、市場価格と目標価格の差を最小化する。この方式では担保はなく、コイン発行量はアルゴリズムによって調節されるのみのため、急激な市場変動には弱いという短所がある。
ステーブルコインのメリットと課題
ステーブルコインを利用すると仮想通貨の「不安定性」を減らすことができ、仮想通貨の利用が促進されて普及につながるとされる。しかし、今回、訴えられたステーブルコインの「テザー(USDT)」の例からもわかるように、完全にはドルに裏付けられておらず、「準備金についての透明性がほとんどない」という批判が浴びせられている。
市場参加者らは、発行元のテザーが主張する準備金についての透明性を疑問視しており、テザーは担保となる準備金で「テザー(USDT)」を適切に裏付けていないと米国証券取引委員会(SEC)に訴えられている。また、「ステーブルコインに対する完全な脱中央集権化には程遠い」という指摘も受けている。ステーブルコインはまだ新しい技術であるため、そのポテンシャルを存分に発揮するためには、数多くの技術や金融上の課題が残っている。ステーブルコイン市場が成熟するにはもう少し時間が必要である。
今後の展望
米通貨監督庁(OCC)はステーブルコイン規制に関する初のガイダンスを発表し、米国の銀行がステーブルコイン発行者にサービスを提供できることを明らかにした。この発表により、ステーブルコインは正式な支払手段の1つとなり、米国の銀行はステーブルコインを自社で発行できるようになった。
今まで銀行で国際送金を行う際には、SWIFT(国際銀行間通信協会)が提供するサービスなどが活用されていたが、ブロックチェーン技術を活用したステーブルコインが金融取引に正式に利用されるようになった。今後、各国の中央銀行が発行するコインもステーブルコインの一種となり、ステーブルコインは私たちの生活にますます深く浸透するだろう。今後に備えてステーブルコインに関心を寄せ、理解を深めておくことは大切である。
(了)
※:ブロックチェーン上で契約が自動的に実行される仕組み。 ^
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