2024年11月06日( 水 )

バイデン新大統領は分断が加速するアメリカを立て直すことができるのか?(中)

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。今回は、2021年2月12日付の記事を紹介する。

 一体全体、実際のバイデン氏はどのような人物なのか。1942年11月20日生まれで、73年から政治家として活動してきた。とはいえ、その名前が知られるようになったのはオバマ大統領の副大統領候補に指名されてからのこと。「チェンジ」を訴えたオバマ氏との二人三脚でようやく頭角を現すようになった。

 ちなみに、副大統領当時の給与は23万ドル。納税証明書によれば、現在の資産は900万ドル。この点、納税証明書を公表しないトランプ前大統領と違い、金銭の出し入れに関する情報は透明性が高いといえるだろう。

 上院議員を長年務めてきたが、実績として挙げられるのは「1990年の女性への暴力禁止法。2002年のイラクへの軍事介入。そして、10年の低所得者向け健康保険法」の実現といった程度にすぎない。お気に入りの趣味は車。ただ、副大統領になってからは運転を許されず。「副大統領職で嫌いなことは運転できないこと」と周囲に漏らしていた。

 幼いころは“どもり”で、同級生たちからしょっちゅういじめに会う。何とかどもりを克服しようと、毎晩、イエーツやエマーソンの詩を朗読したという。それでもなかなか克服するには至らず、大学で演説(パブリック・スピーキング)の授業を受けるまで自信をもてなかったらしい。今でも、時折、発声につまることがある。そのため、トランプ前大統領からは「どもりで認知症気味のバイデン」と辛らつな言葉を投げかけられたものだ。

 そのトランプ前大統領との数少ない共通点はお酒を飲まないこと。トランプ氏曰く「人生で一度もビールを飲んだことはない。どんなことがあってもアルコールは口にしない。なぜなら、飲めば最悪の状態になることがわかっているからだ」。一方のバイデン氏は「アルコールで問題を起こしてきた家系であるから、お酒には触れない」。実は、バイデン氏は病気との縁が深い。それもアルコールを避けている理由と思われる。

 というのも、1980年代には生死の境をさまようような経験をしていた。ある日、突然、首に痛みを感じ、「あたかも電気ショックを受けたようだった」という。首が引き裂かれるような衝撃だったらしく、CTスキャンの結果、脳の直下に動脈瘤が発見された。88年、2つ発見された動脈瘤のうち、大きい方を切除することになった。当時の医師は「生存率は35から50%」と説明したらしく、バイデン氏は最悪の事態を覚悟した。

 実は、バイデン氏は家族の悲劇に次々に襲われてきた。たとえば、72年、妻(30歳)と娘(13カ月)を交通事故で失った。子どもたちを乗せて妻がクリスマスツリーを買いに行く途中で、トラクターに衝突されたのである。2人の息子は一命をとりとめたが重症を負った。バイデン氏は残された息子たちの養育に全力で当たった。

 要は、「息子たちが救い」だったわけだ。73年、上院議員初当選の宣誓は息子ビューの入院中の病院の枕元で行うという異例の状況下での政治家デビューとなった。2015年、その長男ビューは46歳という若さでガンが原因で死亡。

 もう1人の息子ハンターは海軍予備役時代にコカイン陽性反応で除隊を余儀なくされた。今回の大統領選挙中もトランプ前大統領が繰り返し批判したように、ハンターはウクライナや中国とのビジネスで父親のコネでぼろ儲けしたといわれている。その真相はやぶのなかだが、副大統領だった父親の立場を巧みに活かし、中国のエネルギー会社の役員や海外の投資家をホワイトハウスに招き入れ、商談をまとめ上げたとされる。

 それどころか、先に亡くなった兄の未亡人と不倫関係に陥り、子どももつくったというからバイデン氏も困り果てたに違いない。しかも、麻薬とアルコール依存症から抜けられないため、何度もリハビリに通ったという戦歴のアル中息子である。


著者:浜田和幸
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