日本株「非理性的悲観(irrational pessimism)」の是正が始まった~日経平均4万円へ一直線、さしたる押し目はない~(前)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は2021年2月22日付の記事を紹介。株価の急騰は驚異的で、日経平均は30,000円とバブル崩壊以降30年振りの大台回復を果たした。今年に入ってからの株式パフォーマンス(2月19日まで)は、日本(日経平均)が年初来+8.8%と先進国中で最高、米国(SP500)同+3.8%、欧州(STOX600)同+3.2%を大きく上回る。
世界的な半導体ブーム、その恩恵をフルに受けている韓国KOSPI同+8.1%、台湾加権 同+11.0%に匹敵する好パフォーマンスである。株式バブル説が花盛りで、読売新聞や毎日新聞は連日コラムや社説で、株価バブル批判を展開している。しかし、それは誤りである。メディアも専門家も、言質に責任を負うべき、言いっぱなしではいけない。投資家にとって2021年の最大のリスクは、「持たざるリスク」であり、「資産価格下落リスク」でないことは、昨年と同じであろう。
(1) 日本にだけ定着した「負のバブル」の是正
Irrational pessimismの正体
日本株式に関して「非理性的ペシミズム(irrational pessimism)」の是正が始まったことが特筆される。過去30年間に米国NYダウは3,000ドルから3万ドルへと10倍になった。しかし、日本株式(日経平均)は3万円と全くの横ばいであり、株式パフォーマンスは10分の1という極端な割負けであった。この10分の1を形成している中身のうち半分が異常な値上がりバブルの是正であったが、残りの半分は「負のバブル」の形成であった。
1990年には預金金利・債券利回りが8%の時に、配当利回り0.5%、株式益回り2%(PER50倍)であり、株式は明白なバブルであったが、コロナ前の2019年も預金金利・国債利回り0%の時に、配当利回り2%、株式益回り8%(PER13倍)となっており、明白な「負のバブル」であった。
Irrational pessimism(1)「負のバブル」
失われた30年の間に日本株式を巡って「非理性的ペシミズム(irrational pessimism)」が染みついてしまった。日本は成長できない特別の国だ(少子高齢化、突出した財政赤字などを口実とした)との誤った思い込みが、アカデミズム、メディアで定着してしまった。
今、2つの「非理性的ペシミズム(irrational pessimism)」である(1)異常に割安な株式バリュエーション「負のバブル」、(2)極端なリスク回避の金融資産ポートフォリオ、の是正運動が起きている。
株式バブルとは、株価が本源的価値からかけ離れており、それはいずれ市場価格の急変により是正されるものであるが、バブルには2通りの傾向が存在している。通常は値上がりしすぎのバブルであるが、日本には値下がりしすぎの「負のバブル」が定着している。
図表2に見るように、株式や住宅のバブルは日本だけではなく全世界で発生し崩壊したが、その後、大半の国の資産価格はバブル前の水準に戻っている。バブルが崩壊したまま元に戻らなかったのは日本だけであり、日本においては値下がりしすぎの「負のバブル」が定着してしまったのである。
図表3は日本の資産価格(土地+株式時価)であるが、1989年3,142兆円であったものが土地、株価の過剰な値下がりにより、2011年には1,512兆円と半減し、著しい負担を企業と銀行、家計に与えた。今、この過剰な値下がりの是正運動が起きているのである。
こうしたことの結果、日本株式のバリュエーションは先進国で最低水準になっている。日本と各国のPBRを比較すると米国4.1倍、英独仏1.7倍、日本1.2倍と極端な割負けが存在している。これが欧州並みに是正されるだけで日本株式は4割も上昇する。米国の半分の2倍まで是正されるとすると、株価は8割の暴騰となる。今、この日本に固有の「負のバブル」の是正が始まっていると考えられる。
Irrational pessimism(2)極端なリスク回避ポートフォリオ、最悪パフォーマンス
また日本人の金融資産ポートフォリオにおいては、いわゆる安全資産(現預金・債券)保有への極端な偏りが、家計、機関投資家に定着してしまった。たとえば家計の自由に運用できる金融資産(全体から年金保険の準備金を除いたもの)の構成比率を日米で比較すると、米国では株式・投信66%、現預金・債券29%であるが、日本は現預金・債券78%、株式投信18%と、極端なリスク回避型になっている。
株式はほぼ2%の配当と(利益成長による)値上がりが見込まれるが、現預金は利息ゼロ、債券に至っては利息ゼロに加えて将来の金利上昇(=値下がり損)が見込まれるため、この日本のポートフォリオは「非理性的ペシミズム(irrational pessimism)」に支配されていると言わざるを得ない。
日経平均が過去10年で4倍、過去1年で2倍に上昇した実績を目の当たりにし、怒涛のような資金のシフトが「安全資産」から株に向かわざるを得ないのではないか。今、進行している日本株高がそうした「非理性的ペシミズム(irrational pessimism)」の是正であるとすると、この株高にさしたる押し目は考えにくい。一直線の水準の訂正が起きるだろう。
(つづく)
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